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夢現刻物語 23

原作:ぽてとあげたい様 文:かばぷー による

「夢現刻物語」
(ゆめうつつのとき ものがたり)

第23話をお届けします。
前のお話はこちら 序章          10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 

ぽてしゃんワールドと、かばぷーワールドの融合をどうぞお楽しみ下さい。









夢現刻物語 23 ~告白~





「ヤシロ…そなたに、謝らねばならぬことがある。」
「何を…………で、ございますか?」

皇子とキョーコに纏わる一部始終を知るヤシロにとって、何故今更、皇子が面と向かって自分に謝らねばならぬことがあるのだろうか?

「此度の件について、私は…そなたの大事な者を奪ってしまった。」
「それについては、殿下…もう、よろしいのですよ。」

むしろ、それは喜ばしい事であるとばかりに、にこりと微笑むヤシロに、どうしても納得がいかない皇子は、今にも頭を下げそうな勢いだった。

「そなたは、あの夜もそう言ってキョーコを私に預けた。愛する者を奪う私のことをなじってもよいのに、何故そうやって笑える?キョーコはそなたにとって大切…ではなかったということなのか?」
「大切……ですよ?とても大切な女性です。」

「…………では、なぜ!」

「殿下、私はキョーコをとても大切に思っています。なぜなら、キョーコは私の一番大切な、妹……なのですから。」
「………妹………?」
「そうですね…何からお話しましょうか?少し長くなりますが、聞いていただけますか?」







ヤシロがキョーコと初めて会ったのは、忘れもしない皇子の成人の儀
懐かしい匂いのするお茶にふと見上げると、そこには小さな頃の面影が残る11歳の少女がいた。

マツシマ領の小さな田舎で、父と母、年の離れた小さな妹と住んでいた少年時代。くりくりとした瞳の妹が、魔女の血を持っていると知ったのはいつだっただろう…?

怪我をした時、
“いちゃい?兄しゃん、いちゃいのナイナイねー♪”
と、小さなキョーコが歌うように傷口を撫でると傷が消えた。その妹の不思議な力は、兄である自分にはなかった。それはそうだろう…魔女の血の力は女性だけに遺伝するのだということは、あとから学んで知ったことだ。

“お父さんには黙っていなさい…それと…キョーコに人前で歌わせてはなりませんよ…”
母にそういわれて頷いた自分だったのに、自分の不注意で偶然キョーコが魔女である事を知った父は、狂喜した。キョーコを魔女として育てれば、大金が手に入るのでは…と。

だが、母はそれを拒んだ。マツシマ領の田舎では、白い魔女も黒い魔女も扱いは同じだ。
夫婦の仲は壊れ、喧嘩の耐えぬ日々。
やがて、母はキョーコを連れて家を出た。
11歳の自分は母と2歳の妹を…守る術を持たなかったのだ。

妻に去られた父は酒に溺れ、身体を壊して死んでいった。身の置き場に困ったヤシロだったが、帝都にある大学には奨学金の制度があると聞き、なけなしの金を集めて帝都に向かった。

生きていくためには何でもやった。
それこそ人に言えないようなことまで…それでも、ゴロツキになることがなかったのは、自分の中の見えない白魔女の血がそれを拒んだからだったのだろうか?

大学に入ってからも、それほどの野心もないためか人に恨まれるでもなく、人に蔑まれるでもなく…順風満帆に大学生活を送っているところへ、秘書官長のアソウから声をかけられた。“皇子の秘書官見習いになってみないか?”と。
それには興味があった。水の民だという皇子。人々から恐れられている民の血を持つ皇子とは、どんな人物なのか?どのように執政をするのか?
母や妹が住処を離れなければならなかったのは…政治と国民感情ゆえのことであったのだから、次代の皇帝に誠実さと賢明さを求めた。
そうして、城に上がったときに、キョーコに出会ったのだ。

とても聡明な美しい皇子
その学友として、勉学に励むキョーコ

キョーコの瞳が真っ直ぐに皇子を見ていたのは、当たり前のことのように思えた。
そして、皇子の瞳も真っ直ぐにキョーコに向いていた。

互いに縛りをかけ、互いを求める事を拒んでいた二人のそれに気付かぬ方が、可笑しいと言うもの。
だが、皇子とキョーコにそれぞれ別の結婚話が持ち上がったとき、状況は一変した。
だから、ヤシロはあの夜、静かに涙を流すキョーコに提案をしたのだ。




「キョーコ、提案というのは、お前の結婚のことだ。」

それを告げると、ビクッとキョーコの肩が揺れた。

「怖がらなくていい…お前が殿下を…クオン皇子を好いているのはとっくに知っている。」
「………兄さん…」
「今日…皇后陛下から、お前の結婚について話があったのだろう?それは、前々から秘書官の間では話題に上っていたのだ。キョーコをしかるべきところに嫁がせたい…とね。」
「しかるべきところ?」
「そう。キョーコの出自を皇帝陛下も皇后陛下も実は既にご存知だ。それがもし明らかとなったとしても、風評に負けない立場と実力を兼ね備えた人物を…と皇后は考えてくださっていたらしい。」

身寄りのないキョーコの事をそこまで考えてくださっていたとは、頭が下がる思いだった。

「とてもありがたいことに、お前の夫の候補に挙がっているのは、今のところ3人。」
「3人…?」

皇后が、自分の嫁ぎ先にと考えてくださった人物が3人もいるという。それは、知識以外に何も持たないキョーコにとって、酷く滑稽に思えた。

「そう、3人だ。まず、タカラダ領のルト殿。凄く切れ者だが、見かけどおりの穏やかな人物だ。あの肌の色を見て気がついただろう?ローリィ卿は他国の者、他民族にも寛容だ。そして、知恵と実力を持つものを進んで登用されるから、お前にとってもタカラダ領は暮らしやすいだろう。」

ああ、それで…とキョーコは合点がいった。

「次にタイラ…タイラはお前の出自そのものは知らぬようだが、自分から申し出ているそうだ。」
「タイラ…?」

「そう…タイラ自身も地の民の血を引いている。武術に秀で、今では近衛をまとめる重要な人物だが…小さな頃からタイラは、ずっとお前の事を見ていたんだ。それは、知らなかった?」

「……………うん。」
「他にもキョーコを娶りたいと申し出る者はいる。だが、目の届かぬ地方の貴族よりは、身近にいるものか、確かに信頼した人物の元にお前を置きたいと考えてくださっている。」

そこまでの事を考えてくださっているのだよとヤシロは前置いて続けた。

「その上での最後の候補者は………私、だ。」

キョーコは眼を丸くした。

「兄…さん?なんで?」
「驚くことではないだろう?私たちが血の繋がった兄妹であることは誰にも知られていない秘密だ。私とて、白魔女の血が流れている事は大きな声でいえるものではないのだから…」

だから…とヤシロは言う。

「候補にあがっている以上、私が申し込んだようにすれば、皇后陛下はお許しくださるだろう。だから、私たちは結婚をする振りをすればいいのだ。私もお前とならば、幸せに暮らしてゆける。その純潔…皇子のために一生守りたいのだろう?」

ヤシロの優しい眼差しは、一体どこまで知っていたのだろう?
他の男のところに嫁ぎ、その男性を愛せるのならばいい。
……けれど、愛せるのだろうか?ルトも、タイラも…まして、見ず知らずの男性など絶対に無理だ。

皇子だけを見つめてきたキョーコなのだ。たとえ報われない想いだとしても、皇子だけを見つめていたい。
たとえ、皇子が他の女性を抱いたとして…いや、やめよう。それは辛い事だと分かっていても、離れる事は…それだけは出来ないのだから。

「いずれ、皇子が誰かを娶る姿を見るのが辛いのなら、キョーコは城を出て薬師を始めたらいい。もともと二人っきりの家族だ。仲良く暮らしていこう?」

その提案に、キョーコはコクリ…とうなづいた。







「………というわけです。」
「…兄妹?」

「ええ、兄妹」
「ヤシロと…キョーコが…」

いつの間に入ってきたのだろう。
執務室の入り口には、キョーコの姿が静かにそこにあった。

「ええ、兄と妹です。殿下、そう何度も確認なさらなくとも、大丈夫ですよ。私は噓など言っておりませんし、キョーコが…妹がずっと、ずーーーっと殿下を好いている事は、とうの昔に知っておりました。」
「兄さん!!」

キョーコが慌てふためいたように駆け寄って、ヤシロの口を閉じた。

「これ!何を…今更!げほッ…」
「ごめんなさい。だって、いきなり……」

ヤシロは優しい眼差しでキョーコを見つめ、その視線を皇子に戻した。

「私たちはヒズリに忠誠を誓った者。そして、キョーコは殿下に…クオン皇子に永遠の愛と忠誠を誓うでしょう。ですから、何も気になさる事はないのです。お二人の間に障壁となるものは始めから何もなかったのです。そう……何一つ。」

ヤシロはそういい置くと、にこりと笑って部屋を後にし、皇子とキョーコは見つめあった。


障壁となるものは何もなかった…
この思いは我慢する事などなかった…

母のかけた呪縛も
ザメルザのかけた呪詛も
それは、国を安寧に導かんとする、布石の一つだった。
ただ、子供らのための幸せを望む母の心…

二人は見つめあい、静かに唇を重ねた。





(続く)






大変長らくお待たせいたしました。
次回、最終話です。
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コメント

兄妹♡
いよいよ大詰めですね(*≧∀≦*)

この回で、ヤシロにーやんがフォーカスされてて嬉しい………♡
妹想いのヤシロにーやん♡
皇子のことも見守ってくれる、二人の兄貴のヤシロにーやん♡

兄妹が仲良しで和みます〰( 〃▽〃)

かばぷーしゃまの、甘いだけじゃない、人間の人生の苦さや裏まで書いてるトコが好き(♡o♡)

ぽてとの考えてたエピソードと少し違ったりするのもツボ(☆o☆)
おおっ、そうきましたか!!って発見するのが楽しいすぅ〰(*≧∀≦*)
  • 2018-09-02│08:13 |
  • ぽてとたべたい&ぽてとあげたい URL│
  • [edit]
Re: 兄妹♡
>ぽてとたべたい&ぽてとあげたい様

ぽてしゃんの大好きなヤッシーメインの思い出話。
きっと、この先も皇子以外に二人が兄妹であることは告げずに、秘書官業務を粛々と遂行してくれるに違いないと確信しております。(そうじゃないと困る!)


> いよいよ大詰めですね(*≧∀≦*)
> ぽてとの考えてたエピソードと少し違ったりするのもツボ(☆o☆)
> おおっ、そうきましたか!!って発見するのが楽しいすぅ〰(*≧∀≦*)

はい!大詰めでございます!
ぽてしゃんの原案にあらかた沿ってはおりますが、味付けは若干かばぷー風味になっております。
こねこねするうちに、相談していたのから表現が変わってたりしてね。原作のねたの美味しさが生かせてたら嬉しいです。
あと一話、どうぞよろしくお願いします!
  • 2018-09-02│16:25 |
  • かばぷー URL│
  • [edit]

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