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僕らはセピア色の夢を見る14

今週、間に合わないかと思いました…(汗)

は~、何とかセーフ!






「ただいま」

自分の家に帰ったとき、ただいまと告げるのはここ数日の試みで、それを何日も続けて言うのは随分と久しぶりの気がする。
そう。ずっと小さな頃から帰宅時にただいまという習慣は、蓮にはなかったのだ。

キョーコが来るまでは

だが、家の中からは食事の匂いが漂うだけで、キョーコの返事はなかった。





僕らはセピア色の夢を見る14





「ただいま、最上さん、いないの?」

リビングを抜けキッチンに足を踏み入れたが、流し灯の明かりだけが照らすそこには人影がなかった。
代わりにテーブルの上には茶碗がセットされ、おかずにラップがかけておいてある。


“ 敦賀君へ 

 お帰りなさい
 お吸い物は温めて、おかずは
レンジでチンして食べてください。
ちょっと買い物に行ってきます”


几帳面な字でメモ書きされたそれ。

「買い物…?こんな時間に?」

もう、夜の10時を回っている。
結局あの後、蓮は社の家に寄り、叱られながらだらだらと時間をつぶした。それから、予備校に向かったため、この時間になっている。
キョーコが塾などに行っていないのは知っているから、流石にもう帰宅してのんびりしていてもいい時間だ。

最寄のスーパーは初日に案内したけれど、慣れない土地での買い物は不安ではないのだろうか?おまけに、近くといえどコンビニまでは若干距離がある…。

蓮は鞄を下ろすと鍵と携帯だけを持って玄関に向かった。



ガチャッ

「ひゃっ!!」
「最上さん!?」

玄関を開けると、鍵穴に鍵を差そうとしていたキョーコの手がびっくりしたように止まっている。

「び……っくりしたぁ~。敦賀君、帰ってたんだね。お帰りなさい。」
「え?ああ…ただいま。」
「敦賀君はこれからどこかに行くつもりだったの?」
「いや、最上さんがいないから、夜も遅いし、迎えを……と…」

キョーコは驚いたように目を見張った。

「いや、だって慣れない土地だし、この辺は割と安全な地域だといっても夜に女の子の一人歩きは危ないから」
「大げさだよ。大丈夫。なんともなかったよ?」

一人でも大丈夫だと、自分の事は気にしなくていいのだとそう伝えたかったのに、蓮の雰囲気は固いままだった。

「………で、何を買いに行ってたの?」
「え、アイス。」
「アイス?」
「……ちょっと、甘いものが欲しくなって。」
「そう、ならいいけど。心配した。」

ホッと息を吐く蓮の姿を見て、にわかに緊張してしまう。

「うん、ごめんね心配かけて。あ、敦賀君、ご飯食べた?」
「いや、まだ」
「じゃあ、すぐに食べて。温めるから!」

キョーコはドキドキした気持ちを誤魔化すように、キッチンに向かった。



いただきますと言って食事を口に入れる蓮をじぃーと見ていたら、ふと声をかけられた。

「何?」
「ううん、なんでもない。ゆっくり食べて、私部屋に上がるから。」
「え?」
「うん、食器は流しに置いといてくれたらいいから。」
「あ、最上さんは…」
「うん、今日は先に食べちゃったの。だから、上がるね。」
「最上さん、待って」

「……?」

「あの……さ、今朝の事なんだけど」
「今朝?」
「うん、今朝はランニングに行ってたんだ。だから一緒に食事が取れなくて……ごめん。お弁当ありがとう。」

「……うん」

「あと、昨日の件は……」
「昨日?」
「うん、その……もしかして、気にしてるかなと…」
「何を?」
「その……俺が呟いたから……」

キョーコは、「ああ、そのこと」と言いながら席を立つ。

「敦賀君は気にしないで。謝るのは私の方。 だって、図々しくこの家に転がり込んできたのは私たちだもの。それに、敦賀君はもともと一人で暮らしたかった位だもの。やっぱり、家の中に人の気配があるって、困るよね。だから、迷惑かけ……「違う!」」

「え?」

「違うよ、最上さん。あれ、そういう意味じゃないんだ。」
「そういう意味じゃ…ない?」
「そう!君が迷惑とかそういうことじゃない。」

けれど、キョーコは確かに聞いたのだ。
空耳とは言い難いほどに、はっきり聞こえた一言がある。


「だって、“…冗談じゃない”って。」
「ごめん、そう言ったけどそういう意味じゃない。」
「じゃあどういう意味?私と一緒にいるのが苦痛で…だから今朝だって」
「違う!そうじゃなくて、俺自身の問題で…」

多分キョーコには上手く伝わっていないだろうと思った。
けれど、それを今のキョーコに分かりやすく説明することは難しい。


―――いくら何でも、好きな女の子と二人だけで過ごすなんて、どれだけ理性を総動員すればいいのか……これはある種の拷問か??
冗談じゃない!!


なんて、さっきキョーコが心配で迎えに行こうとした自分の行動と相反するに決まっている。家の中にはすぐさま彼女を襲ってしまいそうな、最も危険で欲にまみれた人物がここにいるというのに。そこのところを突っ込まれて上手く説明できる自信もなければ、そんな欲望をあらわにして、ドン引きされるのだけは……避けたい。

「敦賀君、ごめんね?無理しなくていいよ。本当に大丈夫。できるだけ……姿を見せないようにするから……」
「!!?だから、違っっ」
「うん、ごめん、ゆっくり食べて?」

そう言って、キョーコは部屋に上がってしまった。

やはり誤解させたままだったということに後悔しきりだが、迂闊にも口から出てしまった言葉は取り戻せるはずもない。

一人で食べる夕食は、何だかとても味気なかった。





(続く)




あいやー…暗い、暗すぎる。
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コメント

まったく君は…
いつももどかしいったら(笑)
蓮くん、早く誤解を解いて!
最後にはハピエンだとは思うけど、いつも蓮くんにはイライラさせられるねぇ…( ̄^ ̄)
やっぱりね
やっぱり蓮くん、男の子だねぇ。
嬉しいと同時に相反する気持ち。好きな女の子がいて触れたり、話したりしたいものだけど、キョコが蓮をどう思っているかわからなければ、同じ年の異性は好きも嫌いもどちらにも転びやすい不安定な対象ですからね。

言い方ひとつでその距離はいくらでも離れもするし、近くもなる。
特にキョコのように、人との距離を上手く取れないタイプで、蓮は人気者で手が届く筈のない人だと思っていれば、キョコは蓮から逃げるだけ。近寄っちゃいけないとまで思いそうですものね。

さあ蓮くんはここからどう巻き返していくのかしら?
もう少し直接的に『一緒にご飯を食べたい』みたいな例を出していったらいいのかな?
  • 2019-04-06│01:23 |
  • 山崎由布子 URL│
  • [edit]
Re: まったく君は…
> にゃんる 様

もどかしいのが、この若い二人の特徴とはいうものの、本当にもどかしくてごめんなさいね。
でも、ご指摘のとおりハピエン!!(←の予定)ですから、じっと我慢してください。
本誌の方ではどうなってるのかな?(コミックス派なので)また、イライラする展開なのか、少し気になりますが、こっちも我慢の良い子ですね。
  • 2019-04-06│17:09 |
  • かばぷー URL│
  • [edit]
Re: やっぱりね
> 山崎由布子様

男の子の気持ちも複雑そうですよね。
何だかねじれ拗れ模様で、訪問してくださった皆様にはがっかりさせておりますよ。ええ、はい。
ここから蓮君がどう巻き返しをするのか…?ねじれさせるのは得意なのに、拗れを解消するのはどうも不得意らしい我輩…(←なんだそりゃ)
行き詰まったものをどうにかこうにか練りねリして20話に納めようと画策中、なのに、ちっとも書く時間が取れなくて困ってまーす!!無事に完結を迎えられるよう、祈っててくださいね。
  • 2019-04-06│17:15 |
  • かばぷー URL│
  • [edit]
これこそ
若い2人の醍醐味!
いつもはスマート、スタイリッシュに何でもこなす。でも好きな子との事になると上手くいかない。でも、行動は抑えきれない。
本誌では絶対に無い、同級生パラレルのメインディッシュですよね〜

いやぁこの後の展開が楽しみです。最後までじぃーーーっとついていきますからね。
よろしくお願い致します!
  • 2019-04-07│19:04 |
  • よっちゃん URL│
  • [edit]
Re: これこそ
> よっちゃん 様

ねじれ拗れ模様を「若い2人の醍醐味!」といってくださってありがとうございます。

> 本誌では絶対に無い、同級生パラレルのメインディッシュですよね〜

うふふ、メインディッシュだなんて、嬉しいわ。広い心で読んでくださりありがとうございます。
若い、百戦錬磨感のない同級生ですから、そこまで手練れ過ぎることのない初々しさを楽しんでいただけると、書いたかいがあるというもの。20話程度の完結目指して頑張ります!
  • 2019-04-07│19:28 |
  • かばぷー URL│
  • [edit]

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