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僕らはセピア色の夢を見る16

がーん!!
今週も金曜日にアップできませんでした。
日付が変わってしまい、ごめんなさい。(;д;)










僕らはセピア色の夢を見る 16




一人きりのリビングで蓮は微かに聞こえる水の音を聞いていた。

ずっと一人でいる生活に慣れていたから、家の中に人の気配がある事の方が珍しくてつい耳をそばだててしまうのだが、それがキョーコの立てる音だと思うと、尚更意識がそちらに向いてしまう。

小さな頃に母親を事故で亡くして以来、出張でほとんど家にいなかった父親だったが、帰ってくると子煩悩でとても愛された記憶しかない。
その頃隣に住んでいた社の家にはよく遊びに行った。食事の世話から遊び相手まで、まるで兄弟のように一緒に長い時間を過ごし、随分とお世話になったものだ。

社の家には長い事世話になっていたのだが、社が中学生に上がる頃、家を建てるとかでここから引越して行った。もしかすると母親同士の仲が良かったことを理由に、小さいわが子を案じて父親が頼んでいてくれたのかもしれないと、今になって思う。それからも蓮は社の後を追うようにLME学園を希望したりして……社も何だかんだと今でも自分に関わってくれる。

頑なに…母が愛したこの家に住むことに拘った父親が、新しい人間を家に迎え入れた。

きっと小さな蓮を案じてそういう話もいくつかあっただろう。けれど、父はそれを拒んだ。
そんな父が新しい伴侶に選んだのがキョーコの母親だというのなら、それは偶然としかいいようのない奇跡だ。
母親とは全くタイプの違う人間かもしれない。けれど、自分がキョーコに惹かれたように、父もまた彼女に惹かれたのだ。


そんなことが頭の中を駆け巡り、ついているだけでまったく用を成していないテレビの画面をボーっと見つめていたら、突然、目の前から光が消えた。

何事かと思いカーテンを開けてみると、街中の明かりが消えていた。

「ブレーカーが落ちた…わけじゃない、か。」

特に天候が悪いわけじゃないのに珍しい。こんなの滅多にないことだ。

そのとき、浴室の方から何かがぶつかる音がした。
キョーコはまだこの家の中には不案内だ。蓮は視界のない中、急いで浴室へと足を向けた。

コンコン、と浴室の扉をノックすると小さな悲鳴が聞こえた。

「最上さん、停電らしいけど大丈夫?」
「つ…敦賀君?停電?いきなり?」
「うん、そう。すぐに復旧すると思うけど危ないから動かないで。今、灯りをもって来るから」

扉の向こうで声が振るえているのが分かって、玄関にある非常灯を手にすると再び浴室を叩く。

「あのさ、鍵開けてくれる?灯りを持ってきたから」
「かかか、鍵はかかってないと思う」
「ホント?ちょっとだけ開けるよ?足元に置いとくから」

そうして、少しだけ扉を開けた瞬間にパッと電気がついて

「きゃああああっ!!??」「わあっ!?」

そしてまたすぐに消えた。

二人はびっくりした。
一瞬点灯した灯りで扉の向こうに、確かに互いの姿はあったのだから。
けれど、次の停電は…

「参った…な。最上さんごめん、さっきの復旧でブレーカー落ちてるかも。」
「ぅえっ?ブレーカー?」
「うん、玄関の向こうに外の明かりが見えるから」
「どどど、どうしたら……」
「うん、ブレーカー上げるだけなんだけど……実は配電盤、脱衣所」
「えええええっっ??ここ??どこ!」
「うん、上のほう。とりあえずあちこちスイッチ切ってくる。配電盤の位置、分からないだろう?すぐに戻ってくるから」

リビング周辺の電気を切るのに時間はかからなかった。やはり、窓の外には別の明かりが見えるから、二度目の停電は自宅だけの事らしい。


「ごめん、入るよ」

許可を得て入った脱衣所はほんのりと湯気が充満していて、さっきまで使っていたらしいシャンプーの匂いとキョーコの気配が、なにやら心臓を高鳴らせる。

「えと、さっき渡した非常灯、ある?」
「あ、これ…」

暗がりの中で非常灯を受け取ると天井近くを照らした。
何年も暮らしている家だからといって、真っ暗な中での作業は難しいものだ。

「ごめん、これ持ってて」
「あ、はい。」

蓮は配電盤の白い蓋に手を伸ばした。
こういうとき、背が高いのは凄く助かる。
僅かに背伸びをすれば、踏み台がなくとも手が届くのだから。

ぱちん、とスイッチを入れると脱衣所にパッと明かりがついた。

「あ、よかっ………」
「うん、もうこれで大丈……夫……」

ホッとして振り返ると、そこには…

「………きゃあああああ!!!」
「わあっ?」

バスタオル一枚で蹲るキョーコがいたのだ。

「……っ!!ごめん!」
「いえっ…!」

慌てて目をそらすが、一度目に入れたその白い肌の艶めきと匂いとの相乗効果も相まってくらくらする。
突然の事に思考回路はパニック状態。
足も思うように動かなくて、何とか側にある新しいバスタオルを掴んで広げた。

ファサリ、とバスタオルをキョーコの肩にかけると、少しだけ視界に入る肌色が弱まってようやく冷静になれそうだ。いや、冷静とは程遠いのだけれどこういうときに慌てふためく自分が想像できないというか、何故か必要以上に落ち着き払ったような態度になってしまう自分が恨めしい。

「………?」
「………ごめん、すぐに出るから。」

俯くキョーコの肩が震えているのが分かって、そりゃそうだと思う。
けれど、震える小さな肩を抱きしめたくなるのは男だからなのか、それともそれはキョーコの持ち物だからなのか…おそらく後者であろうが、そういうふうに言っても信じてはもらえなさそうだ。

「最上さん…落ち着くまで、もう一度湯船に浸かって…暖まって。それと、ごめん。さっき話したかったこと、今言うね。こういう状況で言うのは卑怯だと思うけど…俺が最上さんのことを好きだって言ったこと……もしかして最上さんの中で“無し”になってる?」

静かに蓮に問われた事はここ最近キョーコの頭を悩ませていることそのものだった。

「………無しでは………」

「………うん、それならいい。だから困ったんだ。俺、今は何とか押さえ込んでるけど最上さんにとって、一番危険な人物になりうると思う。その意味………分かる?」

「…………」

「だからごめん。冗談じゃないって言ったのはそういう意味で、君への気持ちを抑えられる自信がなかった。好きな子と二人きり…って言うのは、ある意味男にとっては拷問に近いものがあるんだ。たとえ、最上さんが俺の事をなんとも思っていなくてもね。だから二人きりが困るのが俺のほうの事情ってそういうこと。でも、分かったんだ。それで最上さんに距離を置かれるのは、凄く辛い。できるなら最上さんを困らせたくないし、すぐ側で笑ってて欲しい。いつもどおりできるならそれがいいとは思ってる。」

「………」
「と思ってたんだ……けどね、確かにそのつもりではあったんだけど…」

……けど?
と、その言い回しに何か引っかかるものがある

「うん、忘れないで?俺、最上さんが好きなだけのただの男なんだ。だから…………………」

小さく蓮が耳元で呟いたのを、キョーコは聞き逃さなかった。

静かに蓮がその場を立ち、パタンと静かに扉が閉まるのを呆然と見つめて、後から顔が上気してくる

凄い事を言われた気がする…
いや、間違いなく凄い事を言われたんだろう


『……だから、今まで以上に君にアプローチするから……そのつもりで』






(続く)



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アクシデントからヘタレン脱出?
ふみふみ、蓮は蓮なりに過ごした子供の時間、ヤッシーやお父さんに守られていたんですね。
そして父の招き入れた新しい家族も、「母」というのとは違うところはあっても『家族』であり、その偶然にキョーコがこんなに近くて、嬉しいけどやっぱり『男』ですからね。
さあどんなアプローチなのかしら~♡
ヘタレン返上して、蓮様ガンバ!

いや~しかしバスタオル姿のキョコちゃん見ちゃって、蓮様その後大丈夫だったんでしょうかね?(何が?いろいろ?( *´艸`))
  • 2019-04-20│22:52 |
  • 山崎由布子 URL│
  • [edit]
Re: アクシデントからヘタレン脱出?
> 山崎由布子様

あと4話の内にヘタ蓮を脱出できるのか!?
これがねー、なかなか骨が折れましたのよ。
アプローチの仕方も結構考えたんですが、おそらく王道系になるかと思ってます。何だかんだと愛されて、そしてキョコさんを射止めたい蓮君には、頑張ってもらいたいです。
ま、私がときめいたらそれでいいので~♪(←何気に自己中)
  • 2019-04-21│19:04 |
  • かばぷー URL│
  • [edit]

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