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僕らはセピア色の夢を見る19

デート♪
蓮君とデート♪









僕らはセピア色の夢を見る 19






週末の朝は、いたって普通にやってきた。

新婚旅行から帰ってきた両親の土産話はさらりと聞き流し、(…というか、耳に入ってこなかった)普通の日常が戻ったと安心すると同時に、大人二人は子供の機微を気にかける間もなく忙しそうに自分の仕事に出かけていった。

キョーコにとっては二人で出かける事がこんなにドキドキするものなのかと思うくらいだ。服だって、おかしくないだろうかと何度も着替えて鏡の前で30分にらめっこした。
けれど、蓮はいつもどおり涼やかで動じる風もなく恨めしく感じる。

東京から郊外へ向かう電車の中で、遠巻きに見る女子高校生たちの視線を痛いほど浴びた。

『ねーねー、あの人格好いい』
『えー、彼女連れじゃない?』
『ホント?どれどれ?』

興味深々にチラチラとこちらを見る視線にいたたまれず、キョーコは深く俯くばかりだった。

(姉ですよ、義理の姉!彼女じゃなくてすみませんね…)

にわかに毒づいてしまう。

「最上さん、どうしたの?気分悪い?」
「え?あ、そうじゃないの。大丈夫」
「そう?ああ、人が混んできたね。こっち」

大きな駅でたくさんの人に押されて、蓮の懐に庇われる体勢になった。

「大丈夫?苦しくない?」
「うん、ごめんね、敦賀君が窮屈じゃない?」
「なんともないよ」

(何よこれ、この前の壁ドンみたい)

扉のすみに追いやられて、その大きな身体で周りの人間から遮断された状況に、照れくさくて、まともに蓮の顔なんか見られやしない。
余計俯き加減になるけれど、そのたびに小さな声で呼びかけてくれるし窮屈な中にも自分のスペースを確保してくれるなんて、どこかの映画みたいで居心地が悪い。

(いい匂い…する)

いつもの柔軟剤の匂いだろうか?同じ匂いがしていてもおかしくないのに、蓮からは少し違う匂いがする。
密着しても自分みたいに焦っている感じでもなく、女性の扱いにも慣れているなんて、やっぱりプレイボーイなんだわ…と、今更のように思って規則的なレールの音に合わせて思考の渦に飲まれかけたときだった。


「最上さん、見て」

ふ、と視線を上げると窓の外を指差す蓮がいて、キョーコは視線を指の先に向けた。

「う…わ、綺麗!」

窓の外には眩しく光を反射する海岸線と、その向こうには水平線が見える。
キョーコは思わず大きな声が出てしまったのが恥ずかしくて、慌てて口元を押さえた。
それを見て、蓮が少し笑う。

「大丈夫だよ。次、降りよう」







都心から1時間ほどの場所にある海沿いの小さな駅に降りた二人は、まだ多くの人を乗せた電車を見送った。

「行こうか」

その駅で降りた人たちは、足早に目的地へと歩いていく。

「敦賀君、どこに行くの?」
「秘密」

ぶらぶらと歩きながら、海とは反対側に向かって歩みを進めた。
寒い中にも春らしい日差しを感じながら、ほとほとと歩いていくと、大きなお寺の門にたどり着いた。

「ここは?」
「うちの菩提寺。ごめんね急に連れて来て」

菩提寺…という事は、蓮の母親が眠っている場所だ。

「いいの?一緒に来て…」
「何で?敦賀の人間になったんだから、当たり前だよ。大丈夫、父さんには言ってあるし、一度連れてきたかったんだ……こっち」

“敦賀の人間”といわれて、胸がツキンとした。
自分からきょうだいだと言っておきながら、そういうところではまだ覚悟ができてないらしい。

敦賀の墓は海がよく見える高台にあった。
お墓の周りは手入れが良くされていて、キョーコは蓮に続いて墓前で手を合わせた。



「さて…と、じゃあ次のところ行こうか?」

腰を上げた蓮の後ろを歩きながら、キョーコは不思議な感じがした。

蓮が案内してくれる場所はキョーコの予想をはるかに裏切るものだった。テーマパークでもショッピングでもない。けれど、その日にたどったデートコースはキョーコとしては十分に楽しめるものだった。
菩提寺からスタートして、美術館、公園、神社……あまり派手ではないが、見ごたえも内容も、全てが楽しくて一日の経つのがもの凄く早く感じられたほどだ。

帰りの電車を待つホームでも、潮風の匂いがただただ嬉しくて、キョーコははしゃいだ。

「海も本当に綺麗!!今日行った所、凄く良かった!」
「本当?」
「うん!敦賀君がこういうところを散策してるイメージなかったから、ちょっと意外だったけど」
「俺のイメージ、どんななの?」
「う~~~ん、ショッピングとか、テーマパークとか…お洒落なカフェとか?」
「そうなの?寧ろそういうところはあまり得意じゃない」
「だって、いっぱい女の子と付き合って……っ…」

そこまで言って、キョーコは不機嫌オーラを感じて口を閉じた。

「ごめ…」
「いや、それは間違いとは言わないけど、そういうのは俺が企画したものではないから」
「え?どういう……」

蓮は困ったように眉根を寄せると、キョーコのとなりに立って海を眺めた。

「俺、女の子と付き合ったことはあるけど、自分から告白とかしたことはないからね」
「………へ?……」

「そう意外そうな顔しないでくれる?だから、デートに誘うのは最上さんが初めてだよ。好きになったのもだけど」

え、と絶句したまま顔が赤らんでくるのが分かった。

「うん、実はそうなんだ」
「………」
「女タラシとか思わせぶりとかじゃなくてね。事実そうなの!」

「あの…でも、森住さんは……敦賀君にネックレス貰った…って……」

「ネックレス?」
「うん、そう聞いた」

頭に分かりやすく?を浮かべてキョーコのほうに向き直る。

「う~ん、もしかしてあれのことかな。俺のロッカーに彼女宛の包みが入っててね、いくらロッカーを移動させても戻ってくるから、直接それを渡しただけなんだけど中身はさすがに知らなかったな。ふーん、そういうことになってるんだ?」
「……はあ?」
「ああ、それで大げさに騒いでたのか。何のことか今ようやく分かった」

「え?じゃあ付き合ってるって言うのは……」
「彼女と俺が?そう言われたの?そういう噂があると聞いたことがあったけど事実ではないよ。中等部の頃に、一度だけ彼女が絡まれてるとこに通りかかったことがあって、とりあえず彼氏のフリをしてって言われたから、その場では今だけなら問題ないとは言ったけど……それからも、デートはおろか付き合ってとも言われた事ないよ?」

はああああ?とキョーコは首を捻った。

何だか自作自演の匂いがプンプンとしてきたような。
そういえば、奏江もそんな事を言ってたような気がするのだけれど…

「うん、どうも俺の知らないところで最上さんに迷惑かけてたみたいだ。ごめん」
「あ、いや。敦賀君が悪いわけじゃ…な、い……」
「そうは思ってないくせに」
「……………ごめん」

「あとね、誤解ないように言っておくけどさ」
「うん」

「真剣にアプローチするって言うの、あれ、噓じゃないから」
「んなっ!!??」

「………でも、今すぐは少しやめとく」

「………え?」

「理由はまた…そうだな。少し落ち着いたら話すよ。あ、電車きた」



帰りの電車の中は少しすいていて、二人は並んで座った。
スマホの写真を見ながら、蓮が音楽プレーヤーのイヤホンを貸してという。
ああ、いつかの帰り道みたいだとキョーコは思った。

二人でイヤホンを分け合って、二人で英語の長文を聞いて…そんなこともあったなとつい最近の事なのに懐かしいなんて、と思っていると不意にキョーコの肩に重みが乗っかった。

どきん、と胸が高鳴る

無防備に頭を預ける蓮から、やっぱりいい匂いがする。そのまま蓮に肩を貸していたら、知らぬ間にキョーコにも睡魔が降臨してしまったらしい。

蓮がふと気がつくと、キョーコと自分の頭が重なり合うようになっていて、髪の毛がくすぐったい。

同じシャンプーの匂いなのに、それが胸を押しつぶすほど愛おしく感じられるなんて…
蓮はキョーコを起こさないように手のひらをそっと繋ぎ合わせると、後20分だけ…と、目を閉じた。






(続く)






そして蓮君、後で気がつく。
『はっ!!今日の服可愛い(似合う)っていってない!』

ああ、うっかりのどじっこ蓮君
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