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僕らは夏色の夜を迎える 前

僕らはセピア色の夢を見る

の続編というか、番外編みたいなもの。
通常版でお届けしますので、皆さんにお楽しみいただけたら嬉しいな。

高校生の彼らが少し成長した姿をお楽しみ下さい。










僕らは夏色の夜を迎える 前編  (番外編1)






それはまだ、彼女が俺の事を「敦賀君」と呼んでいた頃の事。


大学に入ってしばらく経つと、お互いの新しい交友関係は好むと好まざるに関わらず、広がっていった。
まだその頃は屋外でのデートが中心で、連絡を互いに取り合うが週末以外ではなかなか会えない日も増えていったある日、偶然居酒屋でばったりとキョーコと出会った。

「キョーコ?」
「あれ?敦賀君!今日の飲み会、ここだったの?」
「うん。ゼミの先輩たちと。とは言っても飲めないからソフトドリンクだけど」
「同じです」

「敦賀クーン!早く早く!」

「あ、呼ばれてるよ?」
「うん、あ、キョーコはここの飲み会、何時まで?」
「多分2時間だから・・・8時くらいかな」
「そうなんだ、少し早く始まったんだね。こっちの終わりは8時半くらいだと思うから、終わったら連絡する」

そういうと、はにかむように頬を染める君が可愛くて、居酒屋の中だというのにキスをしたい衝動に駆られる。

「分かった。じゃあ後で」

貸切の大部屋に辿り着いた途端、案の定何人かに質問攻めにあった。

「敦賀君、さっきのコ、誰?」
「他大学の子でしょ?ともだち?」
「女友達とか意外よね。もしかして彼女・・・とか?」

「ええ、そうです。付き合ってます。」

ええええええ~~~っ???と周辺は一瞬どよめいた。

「うっそ、ホントに?彼女いたんだ?」
「付き合ってどれくらい?」
「どこで知り合ったの?」

何でそんなに他人の恋愛ごとに興味あるかな・・・と思うのだけれど、高校と違ってゼミの先輩との関係はとりあえず崩したくなくて、女性陣に当たり障りのない答えを返す。

「可愛い子だったな、敦賀、紹介しろよ」
「嫌ですよ。勘弁してください」

「カーッ!!イケメンで大学入ってすぐに彼女もちってか?世の中は不公平だね!」
「先輩こそもてるじゃないですか」
「嫌味はいらん!俺は可愛い彼女が欲しい!そしてお前はとにかく飲め!」
「まだ未成年ですよ?」
「いや!誰もお前を未成年だとは思わん!ほら、でかい図体して飲めるだろう?先輩の酒が飲めないか?ほれ、飲め!」

それはアルコール・ハラスメントと言うんですよ。と切り替えしたいところだが、そうもいくまい。
確かにアルコールを口にした事がないわけじゃない。けれど、冷静にこの場を切り抜ける術はない。何とか誤魔化して、ほんの少しだけ飲んだフリをしてトイレに向かう。

キョーコたちのいるブースの横を通り過ぎる時に、声が聞こえた。

「えーっ!!最上さんズルイ!紹介してくれたっていいじゃない!」
「うー、すみません。それはちょっと・・・」
「でもさ、でもさ、あれくらいのイケメンで背が高いと浮気とかしそうじゃない?」
「あー!分かる。しかもL大でしょ?他の女がほっとかないって!」
「うんうん、女好きっぽいしねーーー」
「彼はそういのじゃ・・・」

(こらこら、一体どんな噓を吹き込んでるんだ?こっちはキョーコ一筋だって言うのに!)

とりあえず用を足して戻ると、まだその会話は続いていたようだ。

「ええええ!?まだ?まだなの?そりゃ、彼氏浮気するわ!」
「うんうん、するねえ」
「だって、あれだけのイケメンだよ?どうやって繋ぎとめるのよ!」
「うんうん、男の下半身はけだものだからねえ」

(ちょっと・・・けだものは否定しないが、誰にでもそうしたいわけじゃない)

そんな心配は大きなお世話で、勝手に人の色恋に口を出したがる輩が世間にはこうも多いものかと辟易する。特にアルコールが入った途端に下世話な話になりがちなのは古今東西変わらないものらしい。

「くすくすくす・・・立ち聞きなんて趣味、色男が台無しね」
「坂根さん」

ゼミの4年生の坂根亜里沙は、とてもクールな美女と言っていい。こういう飲み会にはあまり参加しないから珍しいのだと先輩が言っていた。

「彼女と・・・してないの?」

ここでも下世話な話かとうんざりした顔を見せると、さすがに年上らしく切り返してきた。

「ああ、怒らないで?別にからかおうとかそういうつもりじゃないから。ただね・・・」

つい・・・と、彼女の爪に施されたネイルが自分の二の腕に重ねられる。

「君に興味があるのは、この中にいる子猫ちゃんばかりじゃないのよね。ねえ、どうしてしないの?それともさせてもらえないの?」
「どっちでも関係ないでしょう。それに、申し訳ないですけど俺は先輩に興味があるわけじゃないです」

その声が聞こえたのか、薄い仕切りの向こうが一瞬静まった。

「すみません、失礼・・・「やあ~ン、亜里沙ぁ!ここにいたの!」」
「うん、いるわよ?どうしたの、佳奈」
「もぉ~敦賀君と二人でばっくれて、どうしたのかと思ったじゃん!!ほら、敦賀君も飲もう!飲もう!」
「高村さん、飲みすぎです」
「だ~いじょうぶだってぇ!ほら、亜里沙も~!飲も!」

ぐいぐいと高村佳奈に手を引かれて宴会場に戻ると、しばらく席をはずしたうちにすごいことになっていた。

「ほら!敦賀君、もうちょっと飲みなさいって!」
「いえ、高村さん自分はもうこれで」

「若い子にあんまり飲ませないの。佳奈ってば飲みすぎじゃない?」
「なによぉ、亜里沙ってば、敦賀君を独占?」
「違うわよ」
「敦賀君気をつけなさいよ。亜里沙、結構肉食だからね!」
「彼女いる男に、絡まないの!ごめんね、敦賀君。この子、ちょっと彼氏と別れたばかりなのよ」
「いえ、気にしてないですから」
「ふ~ん!だ、私はもう恋愛しないからね!でも、やっぱり寂しいの~~!!誰か私を抱きしめて~~!!」
「はいはい。ホント飲みすぎ!敦賀君、ごめんね?」
「いえ・・・」

(もう少しスマートに飲めないものかな・・・)

あちらでは男の先輩たちがゲームの話と猥談で盛り上がり、こちらでは女の先輩たちが恋の話に花を咲かせる。大きな声で騒ぐ酔っ払った学生の集団に何だか違和感しか感じなくて、ふっとスマホを片手に外へ出た。

(すぐ側にキョーコがいるのに何をしてるんだろう・・・・・・)

きっともうすぐキョーコサイドの宴会は終わる時間だ。終わったら向かいのファストフードで待っててもらおうかと考える。自分もできるならそれにあわせて退席したい所だ。人付き合いが悪いほうではではないと思うけれど、まだこういうアルコールを介した人間関係になじめないのが現実だ。

一つ息を吐いて店の中に戻ろうとした時、扉が開いた。
それはキョーコが所属する団体の集団で、目に入ってきたのはキョーコに密着するほど近くにいる何人もの男性・・・

それを見て、頭のどこかでプツッと音がした。


アルコールの影響なんてなんでもないと思っていたのだけれど、きっとそれは間違いなくアルコールの影響だったんだろう。


傍目で見れば特段気にするような風景でもない。だが、キョーコを含めた女性の周りに肩が触れ合うほどの距離に群がる何人もの男性を見たとき、頭の中で何かが弾けた。確実に。

別に殴りかかろうとか、威嚇しようとか思ったわけじゃない。
けれど、無意識にそれはでていた。

「敦賀君・・・?」

のっそりと彼らの集団の中に割り込んだ俺は、でかい図体をこれでもかと駆使してキョーコの前にたった。

「終わった?」
「あ、うん。これから二次会に誘われてるんだけど・・・「断って」」

明らかに周りは引いている。
確実に引いているのが分かるけれど、それを止めることはできなくて、キョーコはきょと?として俺を見上げた。

「え、うん。断ろうと思ってた。・・・・・・けど、敦賀君?もしかして酔ってる?」
「酔ってないと思うけど?」
「そうなの?あ、そこのファミレスで待ってたらいい?」
「ううん、先に帰って。鍵・・・渡しとく」
「え・・・鍵・・・・・・」
「うん」

ポケットからキーケースをそのまま渡して、彼女の頭を撫でた。

「待ってて?早めに帰る」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん」

きゃーとか、わーとか耳に届いたけれど、それはもうどうでも良かった。
とりあえず早く帰りたい。その一心で宴席に戻ったが、何故だかその後もしたたか飲まされた記憶がある。

安い酒で悪酔いしたのか、何故そこまでになったのか・・・それは今でも思い出せない。
自分的には凄く冷静なつもりで、記憶もしっかりしている。時間通りに会を終えて、自分でタクシーを呼んで・・・何故か女性の先輩に連れられて部屋に戻ると、当然のように驚いた顔のキョーコがいて・・・

送ってくれた先輩にろくな挨拶も返すことなく、部屋の扉を閉めたのだった。






(後編に続く)
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コメント

コメント(4)
君はまた…
敦賀くん、君はまたカナさんバリの美女先輩にキスマークバリバリ付けられて帰って来ちゃったのかな?自宅まで『連れて』来て…。
おねーさんは悲しいよ…ホントにそんな感じであれば…。

にゃんる

2019/06/07 21:35 URL 編集返信
かばぷー
Re: 君はまた…
> にゃんる様

あははは、本当に読んでいるこちらが、心配してしまいますよね。
キョコさんを悲しませないようにして欲しいです。
そこには何もないことを、期待して下さい。

かばぷー

2019/06/08 14:08 URL 編集返信
あららら、おもちゃ?
蓮くん。先輩たちにおもちゃにされてますね。( *´艸`)
まあね。いい男でお酒も入って、そこに彼女だ何だ。
キョコに迫る魔の手(?)を睨み付けて払いのけ、
「俺の部屋に先行ってて」(^▽^;)

誰が俺の可愛いキョーコを渡すものか!
って感じでございましょうか?

それでも知らずについてきた(連れてきた)女性の先輩でしょうが、
あわよくば御持ち帰られたかったのでしょうか?(^▽^;)
「まだだって!」で期待したのかな?
でもキョーコちゃんがお待ちだもんね♪
まあそのワイワイが、期待の方にいったりして?( *´艸`)

山崎由布子

2019/06/09 00:43 URL 編集返信
かばぷー
Re: あららら、おもちゃ?
> 山崎由布子様

ええ、蓮くん。先輩たちにおもちゃにされてしまいました。ぷぷぷ

こういう席って、必ず彼氏彼女の話題になって、だんだん下ネタになって・・・という経験が我輩にもございます。
答えにくいですよね。今だったらセクハラに間違いないんですが、ちゃんと「彼女いる」とか「彼氏いる」って答えておかないと、変にお世話されたりアプローチされたり・・・面倒くさい事この上なかったです。(今時はどうか知りませんけど)
お持ち帰りされた風を装って、一晩のアバンチュールをと考えていた先輩はお気の毒ですが、それもまた定めなり。
キョコさんを家に待たせているとは、この段階ではご存じなかったでしょうから。
次回、キョコさんを誤解させないように、いい方向に向かうといいなあ。

かばぷー

2019/06/09 14:22 URL 編集返信
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