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僕らは夏色の夜を迎える 後

僕らはセピア色の夢を見る
僕らは夏色の夜を迎える 前編

の続きです。


6月23日 大幅に修正しました











僕らは夏色の夜を迎える 後編 (番外編2)






「・・・・・・・・・気持ち悪い・・・」

ごろりとベッドの上に寝転ぶと、キョーコが心配そうに覗いてきた。

「大丈夫?たくさん飲んだの?」
「そんなに飲んでないつもりだけど、今日は悪酔いしたかな」
「もう、普段飲んでるってバレバレ。お父さんに言いつけるよ?はい、お水」

かざした手の隙間からちらりと見ると、何?って顔して首をかしげる。

「・・・・・・・・・」
「・・・?・・・どうかした?」


ああ、自分の部屋にキョーコがいる。

そう思うと嬉しいのに躊躇ってしまう。当然、この部屋に来たことがないわけじゃない。けれど、二人っきりでこの時間に部屋にいるのは、初めてのことだから。

ごくりと水を飲み干して、また横になる。


「・・・・・・なんでもない」
「そうなの?」

クスリと笑って、流しにコップを持っていくキョーコの後姿を目で追いかけた。
華奢なその身体を抱きしめる妄想を何度この部屋でしただろうか?

目を閉じれば、すぐに欲望に満ちた自分が現れる。


「・・・・・敦賀君が大丈夫そうなら、そろそろ帰ろうかな」
「ん、少し待ってくれたら送っていく」
「いいよ、そんなの。それほど遠くないし一人で帰れるから」
「そんなわけには行かないよ。一人では帰したくない」
「心配性だね」

流しの前で、コップを洗うには長すぎる水の動く音がする。

「何してるの?」
「ん?明日の朝ごはんの下ごしらえ。敦賀君、ちゃんと食べてる?いきなり来たのにお部屋、綺麗にしてるんだね、もう少し散らかってるかと思ってた。」
「それなりにね。今日綺麗にしといてよかった。」
「いつも人がよく来るの?」
「いや、そうでもない・・・・・・けど」

流しの前でこちらの方を見向きもせず、言いたいことだけをいう。
キョーコが何か作業をしながら話し始めるときは聞きたいことがあるけど少し距離を置きたい時。

「気になること、何?」
「別にないよ」

噓だな

のっそりとベッドから起き上がって彼女の側に立つけれど、こちらを見る気配はなかった。

「聞きたいことあるなら、聞いて?」
「・・・・・・・・・・・・」

「あるでしょ?」

後ろからゆっくりと抱きしめると、少し緊張して・・・でもそのまま抱きしめさせてくれる。

「怒ってるね。俺、何かした?」





「・・・・・・・・・さっきの人、驚いてたね。」
「さっきの人?誰?」

「さっき、タクシーで一緒に降りてきた女の人。私を見て驚いてた。」
「ああ、あの人・・・高村さんって言うゼミの先輩。」
「今までも来た事あるの?」
「ないよ。ある訳ない。ごめん、なんであの人がついてきたか、よく分からない。」
「多分、一晩一緒に過ごそうと思ったんだよ。この部屋で。」

「え?それは・・・・・・」

「ないっていえないと思う。」

ああ、そういえば彼氏と別れたばかりだったと聞いた気がする。

「敦賀君、無自覚すぎるの・・・そういうの、辛い」
「何もないよ?キョーコが心配する事は何も・・・」

勿論それが真実なのだけれど、確かに先輩のついてきた意図はそうだったかもしれないと思うとそれ以上はいえなかった。

キョーコは身体の向きを変えると、するりと抱きついてきた。



「・・・・・・・・・・・・ごめん、ヤキモチ・・・」

服に顔を埋めたままのキョーコの気持ちが痛いほど分かる。
自分だってそうだ。キョーコの交友関係に不安になってしまうから。

最近少しずつはっきりと気持ちを伝えてくれるようになって嬉しい反面、不安にさせてしまったことを悔やんでも悔やみきれない。

「ごめん。迂闊だった。」
「ううん、私こそ・・・・・・ごめんなさい」

「何でキョーコが謝るの?もっと、そういうこと、教えて欲しいのに。」
「だって、敦賀君・・・・・・居酒屋の前で凄く怒ってたでしょ?あれ、男の先輩がべたべたしてたからじゃないの?」

ああ、やっぱり気付いてた。

「そうだね。頭に血が上った。」
「全然心配要らないのに。」
「そうとも言えないよ。キョーコは可愛いくせに無防備だからね。」
「よく言う・・・・・・」

つむじにキスを落とせば、腰に回された腕の力が強くなる。
その縋るような腕の強さに、ずっと押さえ込んでいた欲望が外に向かって溢れてくる。

「キョーコ、キス・・・・・・していい?」

胸元に顔を埋めたまま小さく頷くキョーコの頬に触れた。
一瞬目があったかと思うと、伏目がちに目をそらして、でも、逃げない。
そんな仕草も全部、本当に好きだな。と思う。

唇が触れるだけで湧き上がる高揚感
もう唇だけでは足りないと、何度も何度も重ね合わせ、彼女の呼吸まで奪いたくなる。

「・・・・・・っ、ん・・・・・・っ」

「キョーコ、今日・・・・・・本当に帰る?」
「帰・・・・・・る・・・・・・・・・」

「ごめん、でも・・・・・・もう、我慢できない。帰せない。」


「私・・も・・・・・・・・・好き・・・・。今のままだと、不安に押しつぶされそう・・・」

それは自分も同じだ。
キョーコが欲しくて、全部が欲しくて堪らない。
気持ちは手に入れていると思うけれど、それだけではもう足りない。
キョーコも同じだったらいいのにと、何度も思った。


「意味、判って言ってる?」

腕のなかでキョーコがコクリと頷く。


ああ、もう、ダメだ・・・


何度も踏みとどまってきたけれど、さすがにもう無理だと思った。
きっと、キョーコの不安も自分の不安と同じだ。

いきなり広がった世界で、誰かに目移りするかもしれない。魅力的な別の誰かを好きになるかもしれない。
自分以外の誰かも、きっと好きになる。欲しがる。

今の自分たちは、“すき”という気持ち以外には、お互い何も持っていないのだ。

身体の関係だけが相手を繋ぎとめる手段でないのはよくわかっている。けれど、それでも、何か確固たる自信が欲しい。つながりが欲しい。この不安のすべてを埋められなくとも相手のすべてを手に入れたい、愛したい。

彼女の身体を強く抱きしめると、腕の中で小さく身を震わせて、か細い声が聞こえた。




「・・・・・・ちゃんと、敦賀君の彼女になりたい。」






*   


*   








「・・・・・・帰るの?」
「うん。泊まるって言ってなくて」

抱きしめていた腕の中から、彼女はゆっくりと身を起こした。

「今から言えば・・・・・・」
「いいと思う?」

だめだよな。と溜め息をついた。
このまま一緒に朝が迎えられたらいいのに・・・と思うのに、現実は容赦ない。


「朝帰りさせたら、何言われるか・・・」
「学費ストップとか?」
「有り得る」


できれば日付が変わる前に送り届けたい。
けれど、温もりが遠ざかった腕の中は物足りなくて、判断力の鈍った頭の中で我儘を言い出す自分と理性的な自分とが鬩ぎあう。


「次・・・いつ来る?」
「いつ会える?とかじゃなくて?」
「毎日でも会いたいの、知ってるくせに」

「ふふ・・・何だか、照れるね」

こってり絞られるだろう事は分かっていても、この可愛らしく頬を染める生き物を手放したくない衝動に駆られる。

「本当に帰るの?」
「帰るよ・・・敦賀君だって分かってるじゃない」
「うん・・・分かってる」

そう、分かっている。
キョーコが帰らなければならない理由も、自分が一人暮らしを始めた理由も。

けれども肌を合わせた瞬間に、その理由があっという間に吹き飛んでしまうほどに愛しさだけが込み上げて、何度も求めたくなってしまった。快感に身を任せてしまえば、理性の欠片など一瞬で吹き飛んで、快感も充足感も半端なく満たされて、判断力すらもなくなってしまった。

そんな思いを振り切るように、意を決して身を起こし、仕方なく服を着始める。
それでも、ぐずぐずと未練がましく時間稼ぎをしたくなった。

「もう少し・・・」

いつまでもベッドに座ったまま、手を離そうとしない俺の手を握り返して、まるで駄々っ子をあやすように、頬に初めて彼女からのキスが降りてきた。

「明日は無理だけど、明後日・・・・・・来てもいい?」
「ホント?」
「うん、敦賀君がよければ・・・だけど」

駄目だなんて思う訳ない。
そんな可愛い提案に舞い上がるほど喜んで、ようやく俺は重い腰を上げた。




少しだけ暑さを和らげる涼しげな風に吹かれながら、彼女を家まで送り届ける。
妙に照れくさい気持ち半分、会話はほとんどできなくて、手のひらをしっかりと繋ぎあわせて互いの存在を確かめるように歩いた。

ほんの少しの別れが切なくて、明後日が待ち遠しくて・・・

手を離すのも名残惜しく、玄関に入る後姿を見届けた後も部屋の電気が消えるまで、しばらくそこから動く気になれなかった。



それは、彼女がまだ俺を「敦賀君」と呼んでいた、初夏の生暖かい夜のこと







(僕らは夏色の夜を迎える 番外編END)



にゃは、切なくなっちゃった。

(6月23日追記)
自虐プレイ的に読み返してみると、微妙に変えたくなっちゃいました。
なんていうのかな、ちょっとしたトキメキがほしくて?な感じ。
以前のものと違和感はないと思うのですが、自分的にはかなり変わったなと思っております。


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コメント

コメント(2)
一歩進んで
ふふふ…やきもちやら、「まだなの?」から、もう一歩進んでお互いしかないことを感じたくて結ばれた二人…というとこでしょうか?
まあこの調子ですと、「敦賀君」がオオカミさんになって『帰さない』とか言う日も近いでしょうし、蓮くんになる日もすぐかな?

ほくほく青春の…いつかセピア色に思い出す1日の事でしょうね。

山崎由布子

2019/06/14 22:06 URL 編集返信
かばぷー
Re: 一歩進んで
> 山崎由布子様

> ほくほく青春の…いつかセピア色に思い出す1日の事でしょうね。

はい!そうなんですね。
いつか、この頃の事を思い出して・・・という、セピア色の一部をお出ししました。
お互い求めて求められて♪
他人とお酒の力で後押し、って言うところは気になる方もいらっしゃるでしょうが、好きな相手と繋がりたいという欲求が自然に出せるシチュエーションかな?と思いまして。
もうちょっと軽く出せたらよかったですけど、切なくなっちゃいました。

かばぷー

2019/06/15 19:57 URL 編集返信
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