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真夏の果実 4

こんばんは!!
さくっと参りましょう









真夏の果実 4






あの日以来、やたらと敦賀蓮という人物が視界に入る。

アシスタントに指示する時の書類の持ち方だとか
コーヒーを片手に休憩室で談笑している後姿だとか
少しだけ屈んで女の子に話しかける姿とか・・・

まるで、学校一のイケメンを目で追いかけているみたいな錯角に陥って嫌になる。
あんなに、つい先日まで全く意識せずに仕事が出来ていたのに・・・だ。

こうやって意識を持って観察してみると、蓮に声をかける女性はあとを絶たない。
さっきだって、総務のカワイコちゃんが合コンのお誘いにやってきていて、嬉しそうに小さくガッツポーズして帰っていった。

まあ、そうだろうなと思う。
普通に見ていても、間違いなく格好いいと誰もが思うだろう。

キョーコは雑念を振り払うように給湯室に向かった。
お茶を淹れながらふと、またもや同じ思考に捕らわれている自分に気づく。


蓮はとにかく身長が高い。
高いだけでなく体格も良くて、とにかくもてる。
身につけているシャツやネクタイも品良く似合っている。
肌質だって綺麗だし、一般的には・・・いや、一般的以上に整った顔立ちで、見惚れるほどの容姿といっていい。

だから、青年部の海水浴のあと、蓮に送ってもらったことについて何人かに羨ましがられたり、今まで話したことがない女の子に質問されたりする事だって起きた。

でも、それだけ。

あの日、ラブホテルには入ったけれど、実際は何も起こらなかった。その後だって普通に会社近くの駅まで送ってもらっただけだ。(誰にも言わないけど)
結局、口では上手い事を言いながらキョーコと関係を持たなかったのが事実で、結局自分はそういう対象ではないということで・・・




(あ、なんかムカムカする)


「そのお茶、もらえる?」
「ひゃああああっっ!」

狭い給湯室の背後から聞こえた声に、キョーコの心臓は一瞬で跳ねた。それこそ、口から心臓が飛び出すんじゃないかと思ったくらいに。

「なんて声出すの」
「黙って背後に立たれたら、誰だってびっくりしますよ。・・・あ~~~、びっくりした。あ、お茶でしたね。サーバー付近にお茶、ありませんでした?」

我ながら急須を落とさなくて良かったと思いながら答えた。

「いや、紙パックでなくて、それ、静岡産の新茶で作った冷茶じゃないの?この前淹れてくれたの、凄く美味しかったから」

この職場は基本セルフサービスだ。けれど、取引先からいただいたお茶を淹れ、フロアーに配った日のことだ・・・と少し嬉しくなった。

「あ、じゃあこれをお先にどうぞ。キンキンに冷えてますから」
「・・・・・いいの?」
「はい、遠慮なくお召し上がり下さい」

「ありがとう」
「いえいえ、どう致しまして」

職場用スマイルでさり気なく給湯室から追っ払う事に成功して、キョーコは小さく息を吐く。

あの日以降、気まずさ120%と思っているのはキョーコ一人で、きっと蓮は何も思っていないだろう・・・

つい先日、海水浴後のキョーコたちの動向が気になったらしく、石橋が声をかけて来た。
もちろんホテルにいた云々は言える筈もないのだが、会話のついでに飲み会の夜に彼らと合流した経緯を聞いた。何でも蓮と石橋が高校の時の同級生なんだとか・・・4つも年が上なのに、キョーコと同期入社だというのには石橋なりの事情があるようだったが、それは聞かなかった。蓮の海外勤務の間にも互いに連絡を取り合っていて、あの晩、たまたま近くにいることを知って合流したらしい。そして、貴島が取引先の人間である事も聞いた。どうでもいいことだが、あのあと貴島は適当に女の子をナンパして帰ったらしいということも。


は~~~~っっ・・・・・・


小さくはないため息が出た。

「ばっかみたい」

一体彼に何を期待してるんだろう?
単なる同僚の立ち位置?それとももっと構って欲しいとか?寧ろその逆で、関わらないで欲しいとか・・・?
何もなかったからといって、彼のことを全面的に信用できるわけがない。結構もてるのはみて分かるし、女の扱いに慣れているのだろうということも分かる。
そんな男性に期待したっていいことなんてない。なのに、勝手に想像力を膨らませてムカムカしてるんだから、すっきりしない。

(距離を取った方がいいのに、気になるなんて・・・)

期待もしないし、恋愛に現を抜かす気もないけれど、もやもやして心が囚われているのは凄く悩ましい事実だ。

そして、その認めたくない事実が仇となり、キョーコはらしくないミスを引き起こしてしまった。








「はぁぁぁぁぁ~~~、何でこんな失敗したかなあ」

呟いたって誰も答えを拾わない無人のオフィス。

「ああぁぁぁぁ~~~、もう帰りたい・・・」

誰も帰っていいよと言わないし、むしろ帰っては明日が回らない。

キョーコは、翌日に使う百瀬逸美の会議資料を、今年の上半期データではなく昨年度のデータを使って作ってしまっていた。明日の午後の会議に間に合うようにするには、午前中仕上げだなんて危ない橋は渡れない。現に、こういうミスが前日の帰り際に発覚するくらいなのだから、明日の朝一で百瀬のチェックを受けなくてはならない。


「お腹・・・・・・空いたなぁ・・・・・・・・・(ぐぐぅ~~ぎゅるぎゅるぎゅる・・・)」


「ぷっ、凄い音だね」

ぎょっとして振り向くと、何故か蓮の姿があった。

「つっ・・・敦賀さん!??」
「やあ、お疲れさん」
「お疲れさん・・・って、今日、合コンのはずじゃ・・・」
「うん、知ってたんだ?終わったから差し入れに来た」
「差し入れ・・・って」

スッと机に置かれるコンビニの袋

「ああ、百瀬さんがね。凄く申し訳無さそうにしてたから」
「いえっ、百瀬さんは全然悪くなくて、単純に私のミスなので」
「そうだね。で、直ったの?資料」
「あ、はい。あらかた」
「見せて?」

蓮はパソコンの画面を手元の資料と見比べながらスクロールしていった。

「そうだな・・・13ページのグラフ、円グラフの方が見やすいと思うけど、好みがあるから明日百瀬さんに確認してみて」
「はい」
「あとは、15ページ目の参考データがまだ直ってない」
「はい、直します」
「あとは・・・良さそうかな」
「ホントですか?」
「噓言ってどうするの」

ポンポンと柔らかく手のひらが髪に下りた。

「お疲れ、糖分補給したらあと少し頑張って」

にこりと微笑む蓮の顔をまともに見られなくて、キョーコは画面に視線を戻した。

カタカタと一心不乱の振りをしてキーボードを打ち込む。
意識は画面のほかにも向いているのに、今はそれを無視するのが精一杯だ。
けれどもそのうち本当に画面に集中して、しばらくキーボードを叩く音とクリック音だけがオフィスに響いて、いつの間にか時間が過ぎていった。

「・・・・・・出来・・・た」
「どれ?」

いきなり顔の横に画面を覗き込む蓮の横顔が近づいて、心臓がびっくりした。

(ちちちち・・・近い!体温、高っっ)

覗き込む姿勢の近さから、どこかがふれたのだろうか?
あまりに綺麗な横顔が目の前にある。
そして、蓮の体温が間近に感じられて、キョーコは焦った。

「うん、いいね。ちゃんと保存しておいて」
「は、はい。も、勿論!」

驚いたせいか、声が上ずってしまう。意識しすぎているみたいで、変に思われたらどうしようと、更に焦った。

「じゃ、帰ろう。駅は・・・浅草方面だったら、○○駅?」
「いえ、△△駅です」
「分かった」
「あの!自分で帰れますので、大丈夫です。それより、差し入れまでいただいてすみません。ありがとうございました」
「そう?でもこの時間だからね。どのみち、俺も△△駅使うし」
「え・・・あの・・・」
「さあ、荷物取ってきて。エレベータホールにいるから」

ひょいひょいと手を追い払うように使って、キョーコに指示をする。
確かこの前もこんなふうだったような気が・・・と思わなくもないが、とりあえず夜道を歩くのが一人ではない事は、ありがたいのかもしれない。

急いでロッカールームから荷物を持ち出すと、ホールの前で本当に待っていてくれた。

「すみません!お待たせしました」
「ああ、気にしないで」

大した事ではなさそうなそぶりで、蓮はエレベーターのボタンを押した。





(続く)





鈍い・・・キョコさん鈍すぎます。

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コメント

鈍いのでふか?
キョーコたん、鈍いのでふか?
ほげ~、ぽてとも鈍いのかも。いやね、蓮キョ前提で読んでおりますので、蓮君はいつ、キョーコちゃんのことを好きになって、いつアプローチを始めるのかなあ(ワクワク)?ってスタンスなんですけど、でも、このキョーコちゃんが私自身でも、なにも気づかないなあ(・∀・)
てへ、鈍ニブ(*≧ω≦)??
オフィスラブ、いいですよね!!大人なキョーコちゃんもまた妄想を掻き立てられて!!
早く次が読みたいな~…次の更新は、月曜日、なんてラッキーなことは発生しないかな~…ワクワクo(^o^)o…てへ(*≧∀≦)
  • 2019-09-06│20:20 |
  • ぽてとあげたい&ぽてとたべたい URL│
  • [edit]
Re: 鈍いのでふか?
> ぽてとあげたい 様

鈍くないかな?
いや~、だってさ、よくある少女マンガだと、「え?飲み会なのに会社に戻ってくるなんて・・・ドキドキ・・・」っておいのが定番な気がするの。そこから始まる・・・的な?なのに、そんなのないんだもん。キョコさんにとっては(現段階では)ただの微妙に親切な人認定になってます。因みに我輩もそういうの激ニブ人間ですからドキドキしません。あら、用事でもあったんですか?すみませんね、気にかけていただいて・・・くらいのものかな。乙女度が高い人になりたいわー・・・(←今更?)
  • 2019-09-06│20:49 |
  • かばぷー URL│
  • [edit]
No title
更新待ってました(^^)
見ていて楽しい駆け引きです!!!
次の更新が楽しみです(≧∀≦)
  • 2019-09-06│21:07 |
  • あやめ URL│
  • [edit]
始めはひそやかに
キョコは鈍めですね。
でもそれはキョコが鈍く見えるように、最初の1週間はメガネも変えておとなしく観察?似非紳士っぽくメガネを鼻にスッっと押さえて。自分の事もわかっているから初めから騒がれたくなかったとか?

そして海を行ったのも一気に女性陣にも目がいく様になりますよね。それも体調の悪いキョコを送って行くのもさり気なくしておいて、ラ〇ホでキョコのいろんな反応を見つつ、「自分は?」って感じにキョコが気に入って、心中ニヤリ。

翌日からは、蓮へのドキドキを感じてしまったせいで服から何からドキドキが止まらない♪( *´艸`)
スキのステップに進まなければ、服から仕事ぶりから気にしたりしないし、ささやかな「お茶が美味しかった」も嬉しいのスイッチ押しませんもん。

それにキョコのミスとはいえ、遅いからと飲み会からUターンしてきて心配して、差し入れ持ってきて、ミスチェックしながら褒めて、駅までとはいえ送ったりなんて、フルコースでは?( *´艸`)
蓮様の攻めは始まってます~天然キョコとの攻防はいかに?(合戦かい?)
  • 2019-09-07│00:27 |
  • 山崎由布子 URL│
  • [edit]
Re: No title
> あやめ 様

更新を楽しみにしてくださって、ありがとうございます。
駆け引きって現実社会では難しいですけど、考えるのは楽しい作業です。
応援よろしくお願いします!
  • 2019-09-07│23:15 |
  • かばぷー URL│
  • [edit]
Re: 始めはひそやかに
> 山崎由布子様

海水浴の帰りはたまたま偶然にしても、やっぱり蓮さんの行動の裏には何か潜んでいると思わないあたり、鈍い気がします。
あからさまな好意ではないからかなー?と自分で書いていて思ったりして・・・
きっと、あからさまな恋愛を含んだお誘いならば警戒心を抱くんでしょうが、さり気なく親切心に絡めているとそういうのが誤魔化されてしまうんでしょう。
今後の攻防(!?)やいかに?な感じで応援よろしくお願いします。
  • 2019-09-07│23:21 |
  • かばぷー URL│
  • [edit]
新しいオフィスラブ!
こんばんは。かばぷー様。いつも素敵なお話のお届けありがとうございます。
大人のオフィスラブ、いいですね。新しいvvvそして、蓮さん格好いい!然り気無く仕事もできて、心配りできる男なのがしっかり読み取れます。
キョーコちゃんニブチンだからここに来て漸く蓮さん意識し始めましたが、これまでも膨大なアプローチ素通りしていたんだろうなぁ。
この先どんな風に心を繋げて行くのか凄く楽しみです。続きお待ちしています。
  • 2019-09-08│20:55 |
  • ともっち URL│
  • [edit]
Re: 新しいオフィスラブ!
> ともっち 様

久々のオフィスラブですな。(←何気に嬉しい)
ここにきて蓮さんの存在が気になり始めたキョコさんですが、それはもう、石橋君のアプローチも気付かないのですよ。
さて、さて、大人な二人がどうやって近づいていくのか、どうぞお付き合いくださいね。
  • 2019-09-10│21:37 |
  • かばぷー URL│
  • [edit]

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