FC2ブログ

真夏の果実 5

ぎゃー!!
ごめんなさい、予約投稿忘れていました!












真夏の果実 5





「この時間は、結構涼しくなってきたね・・・」

深夜のビル街を抜けていく風は秋らしい涼しさを含み始めたのに、時折アスファルトの熱気を孕んだような風が通りぬけていく。

「そうですね。今年は残暑が厳しくて・・・でも、日中に比べたら少しは過ごしやすくなった気がします」
「違いない」

オフィスビルから駅に向かう帰り道。何の当たり障りもない会話なのにそれも続かず、キョーコは少しだけ落ち着かない気持ちでいた。
わざわざ差し入れをしてくれた蓮に申し訳ないような、けれど、この時間まで付き合ってもらってありがたいような・・・駅へ向かう道すがら、口数が少なく不機嫌そうに思える蓮に気まずさを感じているような、そんな複雑な心境だ。

程なく地下鉄の入り口に辿り着こうかというとき、微妙な気まずさにキョーコが口を開いた。

「あの、敦賀さん」
「ん?」
「今日は差し入れ、ありがとうございました!」

ぺこりと腰を折り、感謝の意を伝える。
何故、このタイミングで御礼を伝えようと思ったのか、自分でも不思議に思っていたのだが、地下に降りる前に・・・と思ったのは事実だ。

「いえ、どう致しまして?」
「あの・・・どうして、今日合コンだったのにわざわざ・・・?」

「・・・・・・・・・んー・・・気が向いたから?」
「気が・・・?」
「うん。それとも何?それ以外の答えが欲しい?」
「いえっ!!そんな、滅相もない!」

いけない、とキョーコは思った。
これは、前回のようにからかわれるパターンだと思うし、今日みたいに若干不機嫌そうなときに聞いてはいけないような気がする。

「あの、本当に有り難かったといいますか、嬉しかったです。今度お礼をさせてください。では、これで・・・」

失礼しますと言いかけて、言葉が遮られた。


「本当に君は迂闊だね」



「・・・え、あ?」

迂闊だといわれて、一瞬思考が停止した。

「全く・・・このタイミングでそれを言うなんて迂闊にも程がある。お礼、本当でしてくれる気があるんなら・・・・・・そうだな。今すぐ貰いたいけど、それでもいい?」
「今すぐ・・・ですか?」

何がいいんだろう?でも、そのうちランチでもと思っていたのに・・・今すぐと言われたら、その辺のコンビニくらいしか思いつかない。

「あの、明日にでもランチなぞ提供できたらと思っていたのですが・・・他のものがいいですか?」
「うん」
「はあ、では何を・・・」
「ああ、くれるんだ。じゃあちょっと向こう向いて?」
「向こう?」

指差された方向に何気なく顔を向けると、唇に柔らかいものが触れた。

・・・・・・ちゅっ・・・・・・



「・・・・・・・・・・・・・・・」

僅かの時間柔らかい唇が触れて、視界を覆ったのは蓮の頬で・・・・・・

突然の事に理解が追いつかず、呆然と指された方向を見つめたままだった。

・・・が、徐々に今の状況を把握して、ギギギ・・・とぜんまい仕掛けのように蓮のほうに顔を向けた。

「・・・い・・・今の・・・」
「ああ、やっと動いた。この前言ったはずだよ・・・ついてきちゃ駄目だよ?って」
「え、いや・・・あの・・・・・・」

あまりの出来事に、混乱していると耳元にまた、あの耳障りのいい声が響く。

「それなのに、お礼をしますとか言っちゃうから」
「いや、でも・・・前回のみならず、今日も実際ご迷惑をおかけした上に、差し入れも頂いて嬉しかったのは事実で・・・まままま、まさか、今のがお礼・・・」

「そう、お礼の一部。本当に欲しいお礼・・・君自身って言ったらどうする?」

え・・・?とキョーコは固まった。
ざわざわと、何か得体の知れないものが喉の奥に挟まって心臓が煩い。

「ま、ま・・・じょ、じょ・・・」

警報が頭の中に響く

迂闊な自分をこの前みたいにからかってるだけ。だから、またまたご冗談をーって言えばいいのに、それ以上言葉が出ない。
お願いだから、笑って冗談だって言って欲しい。もしくは、騙されやすいなとか、お礼の対象にもならないとかこき下ろして。そしたら、ムキになって反発できるのに。

けれど、こちらを見ている2つの瞳は、いつもの仕事の場面の姿とは違っていて・・・


「下心・・・本当にないと思ってた?そんな訳ないよね。言っただろう?君は無防備すぎるんだって。」


状況が状況といえど、ほいほいとお断りもせずについてきたのはこれで3回目。今更ながら言い訳も出来ないほど随分とうっかりな我が身を呪うも、自分を見据える蓮の瞳にどう反応していいか分からない。


彼はもてる。他の課の女の子が噂するくらい。
きっとこの先も、自分とは仕事以外で縁のない男性なのだろうと確信できる。きっと自分をからかっているのも気まぐれに違いない。そう、彼にとっては偶然“気が向いたから”に過ぎないのだとわかっている。

・・・だけど・・・・・・・・・興味がある・・・・・・



そう、自分でも驚くほど、蓮に興味が・・・・・・・・・・・・ある。






「お礼・・・要求するよ?」

つい・・・と頬を撫でる指先に、キョーコはこくりと息をのんだ。

興味なら、確かにある。
間違いなく、彼に興味を持っている自分を自覚している。

当然キョーコだって恋くらいした事はある。
それが簡単には実らない事も、好きな人を見つめる瞳がどんなに切ないかも実感として知っているつもりだ。

多少男女の違いはあろうとも、多少は興味本位な下心が含まれていようとも、こちらを見る瞳は他の誰でもなく自分を見ているのは間違いなくて、だからこそ、今まで誰に向けられても、『是』といわなかったもの。
誰かからの好意的な視線に今まで気付かなかったかといわれたら、噓になる。

知っていて気付かないフリをしていた。・・・それだけだ。

だけど、彼の目は違う。
自分に興味はあるかもしれないが、それは恋愛感情ではない。
だから、きっとこのチャンスを逃したら、それは、二度とやってこない。



「それとも・・・今回も初心な振りして逃げるのかな?」

その言葉に、キョーコの中で何かが吹っ切れた気がした。

「・・・・・・・・・・・・・・・です」
「うん?」

「・・・・・・一度だけのお礼、です!」
「おや、いいの?本当に?」
「女に二言はありません!でも、一回こっきりですから!!一度だけですよ!」

頭上で、ふ、と笑う声が聞こえたような気がした。


「・・・・・・・・・ついておいで」





(続きます)




誘っちゃったよ・・・唐突に・・・
関連記事
スポンサーサイト



Pagetop

トラックバック

コメント

おおおぉ~~
話の流れとはいえ、キョコさんの方が誘ったの?
え? ホントに?
「1回きりですよ」といいながらも、お礼としてとはいえ?
キョコさん大丈夫か? 
ドキドキドキ…。こっちがドキドキしておりますが( *´艸`)

4話の感想で、狙ってる蓮様まんまん?って思っておりましたが、ゆっくり潜水していて「君は隙がある」と頭を出した今回ですか?
(ジョーズかお前は!)

そして、
「・・・・・・・・・ついておいで」
……身長差ゆえにキョコには見えなかったのでしょうが、
ふっと笑みを浮かべながらの蓮様…魔王の蓮様じゃなくて?
「1回きり」で終わらせない…ケケケって笑ってる笑み?(^▽^;)
(アニメの魔女ものとかで、エンディングで笑うコウモリ?)
キョコの隙にまんまと入り込んでる?(''Д'')

キョコの『1回』、本当に意味わかってる?(前回一応確認してたみたいだけど)
それにキョコも蓮様に誘惑されているような感じで蓮様への興味なのなら、それも恋の始まりと言う感じはあり得ますが、『1回』は…ハジメマシテなのかな?
……とお母さんのように心配していますか、私?(^▽^;)

続き楽しみにしてお待ち申し上げております<(_ _)>
  • 2019-09-14│18:21 |
  • 山崎由布子 URL│
  • [edit]
Re: おおおぉ~~
> 山崎由布子様

1回…で終わるわけないと思うんですよね。二次住民としては。

誘ったのは蓮さんだと思うんですが、決定をしたのはキョコさんに間違いないのです。しかも唐突に…
唐突にお話がジャンプするのは、二次妄想」世界のなせる業だと思ってください。
いやしかし、キョコさんは思い切った行動に出たもんです。
大胆じゃないとお話が進みそうにないですね。




  • 2019-09-14│19:47 |
  • かばぷー URL│
  • [edit]

コメントの投稿

非公開コメント

Pagetop


プロフィール

かばぷー

Author:かばぷー
ス/☆ビ大好き!
脳内妄想☆大暴走中
思いついた言葉を書き連ね
作品置き場にしています。

☆当サイトはリンクフリーではありません☆
お付き合いある「ス/☆ビ」二/次サイト様、マスター様のリンクをいただいています。リンクをご希望の場合、お手数ですがリンクを貼られる前に必ずご一報ください。尚、原作者様の作品画像やアニメ画像を無断掲載をされているサイト様からのリンク、多くのサイトを無断で紹介されているサイトは固くお断りいたします。

Attention!
The all of this are NOT related with the Author and/or the Publisher. Not allowed to permit from all illegal actions by the website rules. No reproduction and/or republication without any written permission from blog author and/or web site owner.
Each blogs has the copyright after publication showing on the web site and each web page by the author.
注意!
この中の全ての物は、原作者及び出版社とは関係ありません。
ウェブサイト会社規約、全ての違法行為を禁止します。著作者の許可なく摸作・転作などの行為を禁じます。
各ウェブサイト又は各ブログ執筆者により書かれた、もしくはデザイナーに描かれたそれらの創作作品は、公共へ配信された時点で著作権は著者が所有しています。 

ようこそ

最新記事

カテゴリ

リンクご案内

ちょび様
陽のうらうらと
ピコ様
sei様 風月様
popipi様
ちなぞ様 ぞうはな様
ぽてとあげたい様
ぽてとは揚げて食べたいな