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真夏の果実 6

6話が来ましたね
なんだかのんびり更新ですが、お付き合いいただき、ありがとうございます。


では、さっそくどうぞ。







真夏の果実 6






蓮は真っ直ぐに通りを歩いていく。
けれどもキョーコの追いつけない速さではなく、彼のコンパスから行くと若干ゆっくりではないかと思われた。

歩道で立ち止まる時も、必ずキョーコの収まるスペースがあるのは不思議な感覚で・・・

蓮の向かったのは、ラブのつかない普通のホテルだった。
ホテルでチェックインする時も、エレベーターに乗るときも、指示はないのにそこにいていいのだと・・・寧ろ、その場所を開けて無言で待っている蓮の姿があった。

いざ部屋に入る時も、扉を開けてキョーコが入るのを待っていた。

そんな姿に自ら選択してここにいるのだということを、強く自覚させられて、パタン、と後ろで扉がしまった。




「あ・・・の・・・」

口を開きかけたとき、するり、と後ろから大きな腕に包まれてキョーコは僅かながら、身を固くした。

「安心していいよ。ここは出られないわけじゃない」

クスリ、と笑う声がした。それでも、キョーコは出口には向かわない。ただ、心臓が破裂しそうなほどに脈打っている。

「このままする?それともシャワー浴びたい?」

一体どうすればいいというのだろう。
そもそも、こういうところにきたのは初めて・・・いや二回目で、前回とは違い、する前提で来たのは勿論初めてのこと。

「固くならないで?俺まで緊張するから」

次に降ってきたのは言葉ではなく唇だった。

軽く触れるだけのキスから始まって唇を啄ばまれる。だんだん触れ合う面積が多くなっていくけれど、決してそれは不快じゃない。


ベッドに仰向けになった状態で蓮を見上げた。
シュ、とネクタイを引く姿に、ドキリとして思わず見蕩れてしまう自分がいる。



(ああ、どうして一緒に来たのか分かった・・・)


行きずり・・・ではないけれど、告白だってしてない。
付き合ってもいない。
ただ同じ職場にいる男性とこんな関係になるなんて、キョーコの今までの価値観では有り得ないこと。

自分に関心がないことにイライラして、でも、関わりたくて・・・
関わると自分が傷つくのはおそらく想定内だと分かっていて・・・

でも、したいと思った。

肌を重ねてみたい、と思った。

それは、今まで感じたことのないもの
本能といっても過言でないもの・・・


「うん、いいね」
「・・・何・・・・・・が・・・・・・」

耳元をなぞり始めた唇と、ゆっくりと確かめるように動き始めた指先に、ゾクゾクする感覚が押し寄せて、時折無意識に漏れる高い吐息に、戸惑ってしまう。


「凄く可愛い」

「かわっ・・・・・・!?」


赤面する隙もそれ以上考える隙も与えられず、そのままキョーコは蓮の熱に包まれていった。









意味不明な夢を見た。

蓮が大きなピンク色の傘をさして前を歩いている。
人ごみを縫うように歩いていく蓮に追いつこうと思うのに、追いつけなくて・・・

不意に蓮が立ち止まる。
ゆっくりと振り向いて、キョーコを傘の中に入れてくれた。

言葉も何もなく、ただ一緒に向かうどこか
行き先は分からなくても不安なんかなくて、見上げるとただ微笑んでくれる

まるで、はじめからそこがキョーコの居場所だったみたいな、そんな夢・・・




気がつくと、シャワーの音が聞こえた。

見慣れぬ風景にここがどこだったかようやく思い出し、体の中心にある違和感が昨夜のアレが妄想ではないことを教えてくれる。さらに直接肌の上にシーツが乗っているのが現実として気恥ずかしくて、枕に顔を埋めたくなった。

浴室の扉が開く音と湯気の気配がした。

「あ、起きた?一緒にシャワーを浴びればよかったかな」
「何を言って・・・・・・・・!?ぎゃ!!」

振り返ると腰にバスタオルを巻いたまま、頭を拭きながら上半身に水滴を滴らせる姿に唖然とし、隠れるように背を向けた。

ぎしりとベッドの背中側が沈み込む感触がして、目の前に腕が伸びてドキリとする。
そのあとすかさずこめかみに唇が落ちた。

「凄く、可愛かったよ」
「ふぬぅ!」

耳元で囁く声に急に顔が火照ったのがわかって、パッと顔を上げたら、びっくりするくらいの神々しい微笑みがそこにあって、絶句した。

「うぁう・・・・・・」

「うん。シャワー、浴びてきたら?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」
「なに?」

「そうしたいのは、やまやまですが・・・その・・・今、このままの格好でお風呂場に行くのは、ちょっと・・・・・・」

ぶはっ!!

そういうと、盛大に蓮は噴き出して笑い始めた。

「今更な気がするけど・・・そうか、気になるんだ。じゃあ、ちょっと待ってて。」

なにやらまたバスルームに行ったかと思うと、今度はバスローブらしきものを手に持っている。・・・・・・けれど、目の前にさらされた裸の上半身に目のやり場がない。

「はい。どうぞ」
「つ・・・・・・敦賀さん、その!あの!えっと!じょ、じょ・・・上半身!服着てください。服!」
「え?ああ、気にしないで。風呂上りはいつもこうだから」

麗しいのは顔だけかと思っていたら、結構いい筋肉がついていて、下半身をバスタオルで巻いただけの姿に昨日のアレが思い出されて顔を覆った。

「気にしないで・・・って、困ります!眼のやり場がなくて!」
「そうかなあ・・・別に気にしなくていいのに、あんな事もしたんだし?」
「や!でも、アレとコレとは別物で!暗い中と明るい中では視界に入るものは違うわけで!」
「なんとまあ・・・とりあえず、シャワーしといで。あんまりゆっくりも出来そうにないから」

その言葉にはたと正気に戻ったキョーコは、デジタル時計を見た。
『AM 6:00』

「ろっ・・・6時!?大変!そんな時間だなんて!家に帰ってる暇ないじゃないですか!私、どうして眠っちゃったの!?あああ、朝ごはん!食べれない!あ、その前にシャワーを・・・」

ふと気がつくと、慌てふためくキョーコの隣で肩を震わせて蓮が笑っている。

「そんなに可笑しいですか!こんなに困ってるのに!!」

「や、ごめん。心配しなくても大丈夫。昨日終電逃して近くのホテルに泊まったことにすればいいし、俺は会社に着替えあるから。君はロッカーに入れてたりしない?」
「着替え・・・・・・ある!ブラウスならあります!」
「そう。それに、朝ごはんなら、このあとどこかで一緒に食べよう」
「は?いやいやいやいや・・・一緒に食べるなんて滅相もない!朝っぱらからそんな破廉恥なこと出来ません!」

そんな姿を会社の人間に見られたりしたら、一体どんな仕打ちが待っているというのか!想像しただけでも震えがきそうだった。

「破廉恥な・・・って、じゃあ、コンビニにでも寄ろうか?」
「まさか一緒に!?いやですよ!」
「いや?なぜ?」

何故って、付き合ってもいない男女だからに決まっている。

今は心地よく感じていても、一晩限りの関係はホテルを出た瞬間に終わるべきだ。
いや、部屋をでた瞬間にはもう忘れてしまわなくてはならないのだ。

このあとコンビニで朝ごはんを別々に買って、別々に会計を済ませるイメージも脳内に広がる。きっと、コンビニを出たところであっさりと微笑んで「じゃあ」なんて言いながら会社に向かうに違いない。そんな姿まで想像できてしまう。

どのみち最初で最後なんだから、けじめは早い方がいい。だから、意を決して蓮に告げた。


「敦賀さん」
「ん?」

「なぜに理由はありません!一回こっきりの関係なので、昨日はお世話になりました。チェックアウトはしておきます。どうぞお先に出社なさって下さい」

きっちりとバスローブを着込んだキョーコはペコリと頭を下げると、バスルームへ入っていった。




(続く)
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コメント

コメント(4)
コーフンしました!
こっ、こーれーはー!!!
わたくしめ!鳥肌が立ったー!血がボワーッ!!て一気に流れたから、手が痒くなった!!

後半部分の、蓮君とキョーコちゃんのやり取り……主にキョーコちゃんの思考が死ぬほど好きです……!!
あー!ヤバいわ!
たのしいっ(((o(*゚∀゚*)o)))!!

あ!次回が私の妄想通りになってもならなくても、第6話は、すごく楽しませていただきました。
ありがとうございました(。ノuωu)ノ♡

ぽてとたべたい

2019/09/20 23:13 URL 編集返信
かばぷー
Re: コーフンしました!
> ぽてとたべたい 様

コーフン、ありがとうございます。
なんかねー、蓮さんがベッドの上でネクタイをシュってするのが、脳裏に浮かんじゃってー♬
ついでに、朝起きた後のベッドの背中側がきしむ感じとかね。

結構押せ押せで進んでいる蓮さんと、一回こっきりと思い込んでいるキョコさんとのギャップを楽しんでいただけると、嬉しいのです。(まあ、誰も一回こっきりとは思っていないに違いない)←二次だからー!!

楽しんでいただけたようで、嬉しいな。
最近、妄想脳が復活したようで、でも、頭の中がまとまらず困ってます。(てへ♪)

かばぷー

2019/09/21 16:44 URL 編集返信
聞こえました~!
ホテルまでの部分が完全にぶっ飛びまして、おーーって話が飛んだ。(何だそれは?)

蓮様がネクタイに指をかけてシュッ、って解く時の音聞こえますし、脳内スクリーンには映ってますし、特にネクタイに指を掛けてシュッっていうのが色っぽく感じるの私だけかしら、ここまで盛り上がるのって~って思ったです。(*^_^*)
(しばらく顔の荷崩れ気を付けないと、ヤバい(^▽^;))

そしてそして、キョコ、気持ち良くおねむしていた様子は、
よ、よかったのかな(#^.^#) ←オイ?

で、ちょっと落ち着いて~キョコも初めてではなかったのかな?(母の心配?)
蓮様の誘いにキョコがハマり、でもキョコが自分で飛び込んだわけでもあり、その辺りが分かっててて、
これ以上ないほどの…タラシ、コマシな大人な蓮様。

こなした数なのか天性なのか、キョコの可愛い反応も余裕で楽しんでる感じで、この蓮様ではキョコには太刀打ちできないんじゃないんでしょうかね。
一回こっきりが何回になるのかしら?( *´艸`)

山崎由布子

2019/09/21 23:20 URL 編集返信
かばぷー
Re: 聞こえました~!
> 山崎由布子様

ネクタイ,シュ!が聞こえましたか~~!!
なんだかね、妄想膨らむシチュエーションですよね。(うふふ←なんだか怪しい)

キョコさんが自分で飛び込んでくれることを狙っていたのかどうか・・・なんだかうちの蓮さんは、策士なようでいて抜けてますから。
きっと我慢が足りなかったんでしょう。

一回こっきり なるわけない。というのが我々二次世界の住人の願望ですので、まあその辺は・・・というところでご容赦ください。

かばぷー

2019/09/22 17:54 URL 編集返信
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