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真夏の果実 8

真夏のはずが、すっかり秋になり・・・

社会人パラレルのお話です。










「・・・で?終電乗り損ねて、ビジネスホテル泊まって?朝っぱらからストッキング借りに来た・・・って、あんたらしくないわね。なにがあったの?」

「うううっ・・・それについては、あんまり言いたく・・・」

「吐きなさいよ。さもなくば今後一切ランチなしよ」

そんなふうに詰め寄られ、キョーコはめそめそと琴南奏江に泣きついた。





真夏の果実 8





「ふうん、そういうことがあったのね。じゃあ、百瀬さんのプレゼン資料、無事に提出できたってこと?」
「うん。朝一で提出して、それは無事にOK貰った」
「よかったじゃない、間に合ったんなら」
「うん」
「百瀬さん優しいですよね。女性としても好感もてるし」
「そうなの、だから今回の失敗、本当に申し訳なくて・・・」
「で、何で敦賀さんがそれをフォローしてくれたかってことでしょ?」
「うううっ・・・それがよくわかんない。けど、百瀬さんと仲が良いみたいだから、その関係かと・・・・・・」
「妙な話ね」
「ああ、うちの課でも格好いいって有名ですよ、敦賀さん。私は興味ないですけど。で、キョーコさん。もしかしてその敦賀さんと勢いでやっちゃったんですか?」
「なっ・・・!!!ゲフッッ!ゴホッ!!」

奏江と一緒にランチを囲んだ天宮千織にそう指摘され、思わずスープでむせた。

「やっ・・・やっ・・・!?」
「あら、図星?」
「図星のようですね。おかしいと思ったんです。キョーコさんが朝誰かと一緒に出勤だなんて」
「いやっ!それは、たまたま朝のコンビニで一緒になっただけで!」

「ふーん・・・」
「へーえ・・・」

「二人とも・・・白い目、やめてくれる?」

「まあ、あんたが誰と付き合おうと個人の自由なんだし、あんたがよければそれで・・・」
「付き合って無い」

「え?」「は?」

「付き合って無いわよ。敦賀さんとは」
「・・・・・・そうなの?」
「それに、付き合うつもりもないから」
「それ、早々に言っちゃっていいんですか?本当でうちの課でも敦賀さんは超有名で、帰国を機に彼に声をかけようとしている女子は日に日に増えてますよ。聞くところによると、ただのイケメンじゃないということらしいですが」

「知ってる」

ただ単に顔が良いだけじゃない。海外勤務のこともそうだし、仕事が出来て交渉ごとにも長けているなんて事は普段の姿を見たってわかる。

彼にとっては昨夜の事なんて日常の一部で、特別な事ではないということも・・・

「だって、本当に何もないもの」

「・・・・・・・・・でも、変ね」
「なにが?」
「先輩も言ってたけど、その敦賀さん、今まで社内恋愛系の情報は皆無らしいのよね・・・だから、少しでも噂になりそうな現象自体が初めてなんだそうよ?海水浴のときもあんただけ送って行ったんでしょ?本当にあるんじゃない?あんたに興味・・・」
「まさか、ない!ない!本当に偶然なのよ。・・・・・・あ、ごめん。会議室の準備の確認しに戻らないと・・・また今度ね、お先に!」

「ん、じゃあね」
「頑張って」

一人分の会計を先に済ませ、カフェテリアを後にした。

(噓、ついちゃった)

半分噓で、半分本当

身体の関係は持ったけれど、蓮とは付き合って無いし付き合う気もない。
昨日のアレだって、単なるお礼に過ぎないのだから、報告する必要なんてない。
あと、蓮といるとなぜだか妙にドキドキしているなんてことも・・・

『ばれなきゃいいんでしょ?』

そう、ホテルに行ったことだって、したことだって“ばれなきゃ”いいのだ。

まだ大丈夫、今ならまだ素知らぬふりができる。
現に、出勤後は何事もなかったように普通に仕事ができたのだから・・・












「キョーコちゃん、ありがとう。お疲れ様」
「いえ、百瀬さん・・・本当に今回はすみませんでした」
「いいのよ。結果的に間に合ったんだし、はじめよりもいい物を作ってもらえたから、気にしないでね?」

にこやかな百瀬が女神に見える・・・

午後イチの百瀬の商談は上手くいった。痛い失敗つきではあったけれど、大きな商談がまとまった業務のアシストは、なんとなく誇らしい。会議には十分間に合ったし、先方さんにも気に入っていただけた。百瀬の今回の商談が失敗とならず、ホッと胸を撫で下ろしてデスクに戻った時、蓮から声が掛かった。

「最上さん、DM社の資料が欲しいんだけど、今大丈夫?」
「あ、はい。DM社ですか?」
「そう、○年度と□年度の資料ってデータベースにあるかな」
「あると思います。ペーパーは資料室にあるのでお持ちしましょうか」
「お願いできる?一応自分でも探したんだけど、詳細が欲しくて」
「承知しました」

初めての蓮からのアシスト依頼に少し心が浮き立つような気がした。

「ああっっ!次は俺がキョーコちゃんに頼もうと思ってたのに、先越された!」
「悪いね、石橋君」

データベースは蓮が探すというので、キョーコは資料室に向かった。

「○年・・・○年・・・あ、あった!」

DM社はLMEとは古くからの取引先で、取引品目も膨大なため資料も多い。
分厚いファイルはキョーコの手のひらには少し大きくて、重かった。だからと言ってわざわざ台車を取りに戻るのはもどかしいし、目的の□年の資料はそのすぐ上の棚にある。

「く・・・重っ・・・でもあと一つ・・・」

爪先立ちで何とかファイルの隙間に指先を引っ掛けて、手前に引き出そうとした時、腕に持っていたファイルのバランスが崩れた。

「あっ・・・!!」

―――落ちてくる!

バサバサッと手元のファイルが落ちる音がして、頭へのファイルの落下を予測して慌てて目を瞑ったのに落ちてこなかった。

「あっぶな・・・」

頭の上から聞こえる声におそるおそる目を開けると、自分の上方に腕が伸びていた。
今朝、自分の目の前にあった腕と同じものだ。それと同時に、背中にも体温を感じる。

―――どきん!と心臓が跳ねた。


「すっ・・・すみません!!」
「棚から出す資料、これ?」

見上げると、さっきキョーコが背伸びしていた棚にすんなりと長い腕が伸びている。

「あ、はい。それ・・・とその右隣です」
「これと、これ・・・か、予想外に多いね。台車は?それと、踏み台は?」
「う、少し面倒で・・・」
「そう。なら貸して」
「いえっ、ちゃんと持てますから!」
「そうは言っても5冊は多いよね。はい、こっち持って」

落としてしまったファイルを慌てて拾うと、蓮にいくつか取り上げられてしまった。結局手元に残ったのは大き目のファイルが1冊

「敦賀さん、それ、私の仕事ですから、貸してください」
「違うだろう?俺が頼んだんだから、俺の仕事の一部。面倒くさがって、何度もファイルを落とされるよりずっと効率も良い」

「・・・・・・・・・すみません、次は落としません!」
「なんでも一人で抱えようとしないの」

さらりとミスを指摘されて、赤面した。

「じゃあ、戻ろうか」
「はい、ありがとうございます」

その時、ぴくりと蓮の体が一瞬揺れたような気がした。
けれど、蓮は息を軽く吐いたと思うとくるりと向きを変えて資料室の出口に向かった。

「最上さん。一つ聞きたいことがあるんだけど」

もうすぐ出口扉という時、目の前の大きな背中がその動きを止める。


「はい、なんでしょうか」
「さっきのありがとうは、何に対して?」
「へ?いや・・・ファイルの落下を防いでくださったみたいですし、現にこうやってファイルもたくさん持っていただいてて・・・」

「そう・・・だね。ちょっとファイル預かってくれる?」
「へ?」

トン、とキョーコの腕の上に重いファイルがもう一冊載せられたかと思うと、あごがくいと持ち上げられた。

ちゅ・・・

・・・・・・と、柔らかい唇が押し当てられたかと思うと、ゆっくりと意地悪くて美しい顔が離れていく。

「あのね、頼むから迂闊に微笑まないでくれるかな。誘われてる気になって仕方ない」
「さ!?誘ってなんか!」
「・・・無自覚か、まあいいや。迂闊なのは俺の前だけにしてくれるとありがたいな」

そしてまた、ひょいとファイルを一冊取り除いて、蓮は先に扉をあけた。

(な・・・な・・・・・・!?)

その後のキョーコの挙動不審は、ご想像にお任せしよう。





(続く)



ぎゃー!!8話で終わると思ったのにー!!終わる終わる詐欺だ、こりゃ・・・
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コメント

コメント(6)
それは無理な相談で?
8話で終わる予定でござったようですが、読んだ瞬間に「それは無理な流れでしょ?」とニマニマしておりました。

蓮がキョコを気に入っている包囲網。周りにばれそうでいて蓮がターゲットを絞ってキョコを猟銃が狙っているようにも見えます。
「俺だけにしてね」ってもう逃がす気ないけど、蓮自身の方が驚くぐらいにキョコにのめり込んで…と妄想してます。
ついでに、あと最低プラス4,5話は書いてもらえると嬉しいな( *´艸`)

山崎由布子

2019/10/05 00:35 URL 編集返信
かばぷー
Re: それは無理な相談で?
> 山崎由布子様

無理な相談でしたかね?

書いている途中は、8話、8話って思ってたんですが、なんだか間延びしちゃいました。
最近、短いお話が書けなくて困ります。数年前のほうが勢いよくお話が進んでいたんですけどね。
終わり方、締め方に悩んでしまうのが困りもの。

でも、長くはなりませんよ。
そこまで根気強くないので(笑)

かばぷー

2019/10/05 13:17 URL 編集返信
うかつ?
なんかもうキョーコさんの仕草が全部蓮さんのツボにはまってるだけで恋愛初心者の蓮は迂闊ってことにして、自分の感情に気づいてないんでしょうね...
しかし前回で初めてに気づかないってどんだけ蓮さんも余裕なかったんでしょうか?

Sailee

2019/10/06 21:38 URL 編集返信
かばぷー
Re: うかつ?
> Sailee様

おお、なんて小気味いいコメントなんでしょう。
そうなんです。「キョーコさんの仕草が全部蓮さんのツボにはまってるだけ」って、その通りです。
ねー、本当に恋愛音痴なんだからー。もう、困った蓮さん。

> しかし前回で初めてに気づかないってどんだけ蓮さんも余裕なかったんでしょうか?

あ、これはねー・・・ネタバレになるから、あまり言いませんけど、まあそのー。あれです。
全部完結してから、種明かしってことで!

かばぷー

2019/10/07 20:14 URL 編集返信
ネタ
ねたがあるんですね!!!ではじっくりねかせて種明かしを楽しみにしてみます。

Sailee

2019/10/10 15:41 URL 編集返信
かばぷー
Re: ネタ
> Sailee様

大したものではありませんが、お楽しみに―

かばぷー

2019/10/12 08:49 URL 編集返信
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