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真夏の果実 10

10話・・・予想外にのびちゃった。
大人仕様のパラレルです。(理想はね♪)











『ばれなきゃいいんでしょ』

あの時、確かにその唇は意地悪くそう言った。
なのにその唇が、その指先が時に意地悪く悪事を働く・・・

拒否することはもうできそうにない。
その理由には気が付いていたけれど、キョーコはそれを認めたくなかった。







真夏の果実 10





「敦賀さん・・・一言申し上げてよろしいでしょうか?」
「どうぞ」
「あのー、こういったことは一回こっきりという話だったと思うのですが・・・」

バーのカウンターでそろり、そろりと隣を見れば、グラスを片手に目に痛いような笑顔が飛び込んでくる

「そうだった?」

「そうだった?じゃなくて、そうだったんです!それと、僭越ながら申し上げますが、ばれなきゃいいとおっしゃいませんでした?」
「ああ、言ったね」
「じゃあ何でこんなところに二人でいるのでしょうか。こんなの、ばれる元じゃないですか」

「あの晩の事はばれなきゃいいけど、別に俺の気持ちはばれても構わないからかな」
「はぁ?」

いつもの軽口の後、蓮はクスリと笑って眉間を叩いた。

「最上さん、しわ、寄ってる」
「誰のせいですか、誰の!」
「俺のせいにしていいよ」
「当然です!だから、この手も離してくださいませんか?」

「やだ」

「やだ・・・って!?」
「だって、離したら君は逃げるかもしれないから」

しれっと、独占欲まがいの言葉を漏らすようになったその唇を恨めしく睨んだ。

「逃げませんよ、ここまで来て」
「そう?」

すぐに席を立つ気配のないキョーコに安心したのか、蓮は重ねた手を静かに離した。


(・・・やっぱり、そうだ)

強引なときは少しだけ距離を取りたいと思うのに、いざ離れてしまうと寂しくなる。
触れられたい、と思う自分がそこにいることを強く自覚してしまう。


最近、蓮の依頼でアシストをする機会が増えている。
以前から書類作成には定評があったキョーコだったが、蓮のアシストをするようになって、実は百瀬や石橋に甘やかされてきたのだということに気付いた。結構連はスパルタで、ダメ出しを何度もくらい、今に至る。
おかげでスキルが今まで以上に上達した感じもするし、実際格段に処理能力が上がってきたと石橋光や百瀬逸美をはじめ、椹課長からも評価され、今まで以上に重要書類も任されるようになった。

・・・のはいいのだが、今までと同じように何かをしてもらったお礼を蓮にうっかり言おうものなら、あろうことか盛大にため息をつかれた挙句、職場で誰もいない隙にキスを奪われることもある。

「すべて君が悪い」との解説付きで

それってセクハラでは?と言おうものなら、君に弄ばれてる俺はどうなるの?と切り返される始末で・・・弄んでるのはどっちですか?と言いたくなる。
でも、そんな意地悪をいやだと思っていない自分がいて、始末が悪いとキョーコは思っていた。


触れられたい
近づきたい
そんな欲求は日に日に強くなる。

取引先の女性がすごく綺麗な人だったり、自信に満ちて輝いている女性であったりしても、蓮を見れば頬を染める。
そんな蓮の行動に、心臓が痛いくらいに乱される時もあるというのに、自分をからかっている瞬間があることが嬉しいなんて、どうかしている。

(これじゃ、普通の尻軽女と変わらないわよね・・・)

自嘲の笑みを漏らすも、今日みたいに飲みに行かないかといささか強引に誘われて・・・でも、断り切れなかった。

「そんなに嫌ならついてこなければいいのに。本当に迂闊だね」

嫌だなんて思う理由などないのだ。
本当に嫌なら来るわけないのに、そんなことにも気づいてもらえないなんて情けない。
それに、自分に関心があるうちは少しだけそばにいても許されるだろうかなんて、あさましい考え方をする自分自身に呆れてしまう

「呆れてるなら、誘わないでください」
「呆れてないよ。懲りないなと思って」

「む、巧妙な手口で誘うのはどなたですか」
「俺のこと?わかってて断り切れないのもどうかと思うよ?」

「・・・・・・・(ゲスい・・・)」

「軽々しいを超えて、下衆扱いになってきた?」
「・・・・・・失礼しました」

くすくすと蓮は笑う。

「敦賀さんにとって私は揶揄いがいのある人間ってことなんですよね。大分わかってきました」
「どうだろうね?」

否定も肯定もしないその言葉に、キョーコはぶすーっとほほを膨らませた。

「ねえ、最上さん」
「・・・・・・・・・なんですか?」

「恋って、どういう漢字を書くか知ってる?」

いきなり何を唐突に聞こうというのだ?と、キョーコは怪訝そうな顔をして答えた。

「それくらい知ってますよ。なべぶたの“亦”に心ですよね。それが何か?」
「うん、知ってるならいいんだ。じゃあ、愛は?どこに心がある?」

「愛・・・?」

恋は下に心があって、愛は真ん中に心がある。それくらいは誰でも知ってて…

「諸説あるけどね。人に対して何かを求めたり、心が乱れたりする。そんな下心があるのが恋なんだそうだ」
「下心・・・」

「その点でいえば、間違いなく俺は君に恋している」

「・・・・・・は?」

「驚くことじゃないだろう?初めに言ったはずだよ。君に近づいたのには下心があるって」

さっきまでの軽口とは違って、急にキョーコを見る目が真剣になった。

「正直、乱れすぎて困ってる。君は?俺といて心が乱れない?」
「乱れ・・・・・・・・・」

乱れないとは言えなかった。
初めから乱されっぱなしだ。

迂闊にもラブホテルに行ったことも 
何もされなかったと落ち込んだことも
何人もの女性に声を掛けられる姿にモヤモヤしたことも 
自分から肌を合わせたいと思ったことも

―――今更、どうしようもなく蓮に惹かれているという事実も・・・


ふと気が付くと、切れ長の目が探るみたいに自分を見つめていて、顔が一瞬で火が付いたように熱くなるのを感じた。

(うあっ!ヤバい・・・!)

自覚した途端、蓮の顔がまともに見られない。
慌てて顔を背けたら、大きな掌が頭に置かれた。

「信じられないかもしれないけどね、君に一目ぼれしてたみたいだ・・・」

突然降ってきた有り得ない言葉にソロソロと顔を上げたら、いつも涼しげな顔をしているはずの蓮が目を逸らし、口元に当てた手の隙間から見える頬がわずかに赤い。

ちらっとこちらを見る視線が気まずそうにキョーコをうかがう。

「困らせたいのは確かにあるから、さっきの言葉を否定しなかったんだよ。我ながら子供じみてると思うけど」

子供じみてる?敦賀さんが?

確かに連のこんな姿は、会社で見たことなんかない。
いつもクールで淡々と仕事をこなして・・・まあ、時々意地悪だし、最近はよくも涼しい顔をして隠れてキスなんてできるものかと、100%遊び人(女たらし)の認定を心の中でしたばかりではあるのだが。

それでも・・・気まぐれでもいいから、構ってくれる間は近くにいたいと思う自分が、究極すぎるほどに愚かしいと思っていたのに・・・今、なんて?


「君が一度だけっていうなら、それでもいいと思うほど君が欲しかった。ただし、一度で終わる気は初めからなかったけどね」 

「は・・・?」
「そんなに、一度きりで関係を終える男だと思われてたわけ?」

貴島じゃあるまいし・・・なんてつぶやいている。

「でも、そんなの、下心なんか誰にでもあって敦賀さんが本気かどうかわからないじゃないですか、一時の気の迷いのことだって!だから一度だけって・・・」
「だから、どうしてそういう発想に至るのかがよくわからない。君は何も思っていない相手、嫌いで嫌いでたまらない相手と簡単にそういう関係になるわけじゃないだろう?確かに君を誘うのは少し早すぎたかもしれないとは思ったけれど、こうでもしなきゃ君はいつまでも俺との関係を縮めようとはしてくれなかったんじゃないかな」

「む・・・」

確かに否定できないかも、とキョーコは言葉に詰まった。

「今からでもいい。俺を欲しいと思ってくれないかな?君からも近づいて欲しいんだ」




あの日の夢みたいだ・・・と、キョーコは思った。

ピンクの傘をさして、恥ずかしげもなくキョーコを待ってくれていた夢
傘はふと、自分に向かって差し出されている。
“ここに入っておいで”と告げるように・・・

その途端、視界が晴れたように蓮の優しい瞳が飛び込んできて、こくり、とキョーコはの息をのんだ。


「敦賀さんは、こういうの遊びでされる方だと思ってました」
「うーん、遊び・・・ではないかな。少なくとも職場の人間に声かけたのは初めてだし、そんなに器用じゃないよ」
「他にも敦賀さんのことが好きだっていう人はたくさんいます」
「そうかも知れないね。でもそれは、君を拒絶する理由にも、拒絶される理由にもならない」

「・・・・・・敦賀さんの隣には、もう決まった誰かがいるとかじゃないんですか」
「いたら誘わないよ」

人の気も知らないで、と蓮は言う。
 
「君の場所ならあけてある」

「私の・・・場所?」

そう問うと蓮は困ったように首を傾げて、キョーコを見た。

「まったく・・・迂闊な上に鈍いとか、今まで誰にも餌食にされなかったことを感謝しないといけないね。この先、どこまで言えば分かってくれる?」


ふいに“安堵”の二文字がぽかりと心の中に落ちてきたみたいだと思った。
今まで疑わしい行為は全部遮断してきたけれど、蓮にはそれを疑ったことがなかった理由が分かったかもしれない。

「最上さん、聞いてる?」

この人はきっと待ってくれる。
キョーコの答えを・・・

「敦賀さんに言いたいことがあります・・・」

蓮は微笑んで、もう一度キョーコの手を強く握る。
キョーコは少しだけ頬染めて、蓮を見上げた。


「どうぞ」

「あのですね・・・・・・」







(真夏の果実 終わり)






えええっ!?タイトルなんで真夏の果実なのーーーっ???って、突っ込まないでください。
ちょいと、語呂に惹かれてしまい、なんかエッチな感じ♪と思ったんです。
キョコさんはみずみずしい真夏の果実って感じかしら?
ああ、恥ずかしい・・・でも、これに代わるタイトルが思いつきませんでした。相合傘?う~む、違うな。なんだろう?まあ、これでいいにしましょうね。

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