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僕らは夕映え色の空を越える(前編)

僕らはセピア色の夢を見る
僕らは夏色の夜を迎える

の続編です。

では、どうぞー♪







敦賀蓮は機上の真っ只中にあった。

キョーコが留学先へと選んだ国へ13時間あまりの長いフライト。
今はSNSで近況をリアルタイムに報告できる時代とはいえ、実際には海と陸と時間という 物理的な隔たりがある。

あと数時間でキョーコに会えると思うと、蓮は逸る気持ちを押さえがたかった。





僕らは夕映え色の空を越える (前編)





空港でもかなりの時間を要した。
大きなスーツケースを受け取り、足早にゲートに向かい、空港からの直通バスに乗り込み目的地へと急ぐ。
約3時間をかけて目的地に向かうバスも時間通りに来る事はないらしく、20分遅れで出発した。

気持ちだけが先走ってしまうけれど、ここはイギリス。

日本とは時間のかけ方が微妙に違うのは仕方ない。だからイライラしたってしょうがないし、今日到着する事はキョーコには伝えていないのだ。焦って早くついても無駄になるかもしれないのだと、少しクールダウンできた。


大きな大学を中心に据えたその町は、学生のための町といえるだろう。
通りを抜けて大学の門をくぐり、いくつかの学生寮が立ち並ぶ一角の住所に書かれた寮のチャイムを押すと、少し待ってから寮母らしき人物が顔を覗かせた。

「キョーコ?まだ大学から戻ってきてないわよ。あなた、キョーコのボーイフレンド?ほほほほほ、凄くハンサムね。日本から来たのは分かるけれど・・・でも駄目よ。うちは女子専用のドミトリーなの。」

寮母さんの冗談交じりの言葉にホッとしながら、教えてもらった大学へ向かう通路にあるベンチで待った。
先にホテルに荷物を預けておいた方が良かったかなとか思いながら

どれくらい待っただろうか?
持ってきていた本を広げて、ほんのり色づいた葉の揺れる木陰で読書をしながらキョーコを待つなんて・・・日本だったら考えられないなと蓮は思った。空気が乾いているせいか日差しほどの暑さは感じず、寧ろ肌寒い。

そのうちに授業が終わったのか、パラパラと人通りが増えてきた。今時東洋人はイギリスでも珍しくないとはいえ、さほど多くはないのかもしれない。多種多様な人種が目の前を通り過ぎていく中、蓮はそのあたりにキョーコの姿がないかと、目を凝らした。

―――いた!

大柄な人たちに紛れて、茶色い髪の毛がぴょんぴょんと揺れている。
少しイメージチェンジをしたのだと、写真つきのメールが送られてきていた。
さぞかし奇抜な髪色になっているのかと心配したのだが、そうでも無さそうで安心したのはつい先日の事。

これまた国際色豊かな人たちに囲まれて、集団は目の前を通り過ぎた。

通り過ぎた後、しばらくしてキョーコの歩みが止まった。
気付かない振りをしていると、つま先がこちらを向き、遠慮がちに自分の前で立ち止まる。




「敦賀・・・くん?」



さも、呼ばれて気がつきましたというように顔を上げて微笑むと、目をまぁるく見開いたキョーコがいて、そのあとで盛大に顔がクシャリと歪んだ。








「どうして連絡してくれなかったの?びっくりしたじゃない!」
「ん?驚かせたくて。大成功だね」

ベンチでの飛びつくような抱擁のあと、寮の中に案内された。

「本当にびっくり!泊まるところは?ここ、女子のフラットだから男性は泊まれなくて・・・」
「うん、大丈夫。さっき寮母さんから聞いた。それにホテルはちゃんと取ってあるから心配ない」
「どこのホテル?駅から近いの?」
「うん、かなりね。先に荷物を置いてくれば良かったかもと思うくらい」

日本語で話しているのが珍しいのか、扉を開いた個室の前で何人かのシェアメイトたちが覗いては、挨拶をしていく。

「敦賀君が珍しいんだよ。私の友達でここに男性が来たのは初めてだから。それに、背も高いし・・・かな。」
「そうかな、ここではそんなに大きいと思わないけど。他の日本人留学生はいないの?」
「いるよ、私が知ってるのは男性が何人かと女の子が私のほかにも二人くらい。別の寮だったり、シェアハウスに住んでる子もいるの」
「そうなんだ」

ベッドから立ち上がり、扉を閉めに行くとキョーコは慌てた。

「敦賀君!それ、まずいから!」
「まずい?確かにルール上はそうだろうけど、女子ばかりの空間で注目されるのは少し居心地が悪くて・・・だめ?」

慌てて近寄ってきたキョーコを、閉じた扉を背にしたまま抱きしめた。

「ごめん、少しだけ補充したい」

先ほどの飛びつくようなハグだけで、キョーコ不足が補える筈はない。
ぎゅう、と強く抱きしめて唇を奪った。
深くはないキスなのに、心が締め付けられるようで腕の中から離したくなくなる。

「・・・ん、私もホントはぎゅってして欲しかった・・・」

ドア越しの背中からは、共同キッチンのざわめきが聞こえる。
呟き程度に会話が聞こえるこの空間で、数分間だけれど互いの体温を布越しに感じた。

「二日間はここで・・・こっちのホテルに泊まるけど、残りの三日はロンドンに宿を取ったんだ。」
「ロンドン?」
「うん、だから、明日と明後日はこっちに見学に来るよ。それも申し込んである。」

そういうと、キョーコは目をぱちくりと見開いた。

「大学・・・で、聴講するの?」
「うん、二日間だけ。駄目だった?」
「駄目な訳ない!え、凄く嬉しい!」
「週末は大学も休みだろう?」
「うん」
「それなら一緒にロンドン観光でもどうかと思うんだけど・・・」

ぱあああっと、キョーコの顔が輝いた。

「行きたい!観光したい!」
「なら良かった。きっとキョーコは真面目だから、この町からあんまり出たことないだろうと思ってたから。」

ブンブンと激しく首を縦に振るキョーコに、自然と笑みがこぼれる。

「じゃあ、今日はこれで我慢する。皆も心配するといけないしね」

そう言って扉を開けた瞬間、共同スペースにいた何人かのシェア・メイトの瞳が一斉にこちらを向いた。




「・・・・・・・・・うん、ここでの長居は無用だね」


そう呟いた蓮の言葉を彼らは理解できなかったに違いない。





(続く)



妄想です!
…が、一応ここでは一人ずつに個室はあるけど同じ階(フラット)に4~5名が共同生活をしていて、キッチン・バス・トイレが共有の女子寮をイメージしています。
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コメント

コメント(2)
わーい、続きだ(^◇^)
遅くなりましたが感想です。
わーい、二人のまた少し成長したお話で嬉しいです。
蓮くんはキョコが帰って来るのが待てずに、飛んでっちゃったんですね。文字通りに(^_-)-☆

キョコは女子寮みたいなアパートなんですね。まあその方が安心ではありますが、ずっと一緒はダメとしても、一緒の時間をしっかり予定していますね。
離れていた時間を、数日の時間に込めて、大学での講義にも出てキョコの馬の骨折りに来たんでしょうかね?(^▽^;)
その後は二人でのデートの日々は、甘いでしょうかね♡ 甘いですよね♡

ぶあっついラブレターは、また近いうちに書かせて頂きます!
(え・いらない?…押し付けて送りますから、ほほほ)

山崎由布子

2019/10/31 00:02 URL 編集返信
かばぷー
Re: わーい、続きだ(^◇^)
> 山崎由布子様

意図はいろいろありましょうが、キョコさんが旅費を気にして帰国しないのとは対照的に、学生でも蓮君は海を越えて行っちゃいそうかなー?なんてね。なんだか、お金の使い方が違っていそうな気がします。

分厚ーいラブレター!!わお!滅多にいただけるものではないので、楽しみです。
ワクワクして待ってまーす♪

かばぷー

2019/11/01 20:33 URL 編集返信
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