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無人島に行こう!2

早速どうぞ









無人島に行こう!2





目が覚めたのは、太陽が昇るのと同時だった。
夏なのに森の中にはひんやりとした空気が漂い、湧き水のせいなのかと思ってしまう。

身支度を整えたキョーコが一人用テントのファスナーを下げてあたりを見渡した。
夜中も遅くまで蓮の小屋の中など、収録は続いていたらしいから、今日は少し遅めなのだろうか。少し離れたテントの中から聞こえる小さないびきはスタッフのものらしい・・・

だが、それ以上に小鳥のさえずりや、木の葉の擦れ合う音がシャラシャラと耳に心地よく、清々しいという形容詞がぴったりだと思えて気分が上がる。

(うふ、いい朝・・・)

キョーコはテントから這い出して、蓮の寝床の様子を見に行った。が、すでに気配はなかった。

(敦賀さん、どこに行っちゃったんだろう・・・?)

急にキョーコは不安になって、砂浜のほうに足を向けた。
砂浜にも蓮の姿は見えないが、カメラマンは海のほうにレンズを向けていて、キョーコに気付いたのか軽く手を挙げた。

もしかして、海に潜っているのだろうか?と、視線を海に向けた時だった。
岩場のほうで水音がして振り返った。

ザバアッ

その姿は、どこかで見かけた姿と完全にリンクする。
水から髪をかき上げながら浮かび上がった蓮の姿はグアムで見たコーンと同じで、またもや見とれてしまった。

海水を滴らせながら顔を上げた連は、砂浜で呆然とたたずむキョーコの姿を見つけて、神々しく微笑んだ。

「やあ、おはよう京子さん」
「・・・・・・・・・っ!!おはようっ、ございます!」
「今、汗を流してたところ。朝の海水浴は気持ちいいね。君もどう?」

ぎゅっと上着の裾を絞りながら陸に上がってくる蓮の姿は、どこをどう見ても黒髪のコーン。いやいや、今は敦賀蓮でしょ。と首を振るが、同一人物であることには間違いないのだから、どっちでもいいと言われたらその通りだ。

「どうした?」
「いえっ・・・な、なんでも!」

さっと目をそらせたキョーコの顔を、蓮はまじまじと覗き込んだ。

「どうした?困ったことでもあった?」
「・・・っ!(ちちちち、近い!)」
「ん?」

(敦賀さん・・・さっき、グアムのコーンみたいでした・・・)

照れ臭そうにちらりと見上げるキョーコの姿に、蓮は少し目を見開いたかと思うと、

(今日は不意打ちでキスしたりはしないから、安心して?)

ばひゅっと、後ずさるキョーコに笑いながら、蓮は安堵した。
朝からキョーコの頬染める姿が見れたのだ。本当なら今すぐ抱きしめたいところだが、スタッフがいることで、ブレーキがかかるならそれでいい。


「もそかして、朝ごはんの心配してる?なら大丈夫。その辺に調達してあるから」
「・・・へ?」

ほくほくと蓮が示す方向を見ると、細い木の枝に開いたお魚がぶら下げてあった。

「・・・・・・干物?」
「うん。御飯がないけど、まあいいかなと思って」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぷっ!」

「なぜそこで笑う?」
「だって、敦賀さんが干物・・・干物って!」
「心外な。俺が干物をこしらえても何の問題もないだろう?」
「ないですけどっ・・・くくく、干物・・・」
「分かった。干物が嫌なら今日の夜は姿焼きにする」

ええええ~、どれだけお魚とるのがお上手なんですかと言いながら、二人はひとしきり笑いあった。


蓮の準備した干物をおかずに、すりおろした芋と、小麦を混ぜた石焼の薄っぺらいパンを食べた。その後散策再び散策に出かけた時だった。

「敦賀君と京子ちゃん、本当に仲がいいんだね。確か、同じ事務所だっけ?」

そんな風にディレクターは質問した。

「はい!心から尊敬する先輩です」
「へぇ、そうなんだね」
「ははは、ありがたいですね。共演も何度かしてますし、マネージャーも同じなので仲がいいと言われたら、そうです。」
「プライベートでもあったりするの?」
「え・・・」

一瞬キョーコは言い淀んだ。

「ありますね。彼女、料理上手じゃないですか。たまに料理を作ってふるまってくれる時があるんです」
「ほほう!」
「例えば、公園なんかでマネージャーと俺の3人でお弁当を囲んだときもありますよ」
「そっ、それは、移動中で」
「まあ、そうだけど俺には貴重なプライベートの時間だから。いつも有り難く思ってます」
「なるほど、なるほど。それであの言葉か・・・忙しそうだもんね、敦賀君」

蓮は何気にちらりとキョーコを見た。
赤くなりながら恐れ多いという風に手を振っているキョーコは、本当でそう思っているのだろう。

(いつ公表しても構わないって、言ってるのにな)

蓮は胡散臭く微笑むと、スタッフの二人が次の撮影場所を定めようと相談しているそのすきに、キョーコの手を握った。

「(ひゃ?)」

キョーコが驚いたようにこちらを見上げる。

(こういう時間も、俺には貴重なんだよ?)

内緒話でもするように耳打ちすると、ぼぼぼぼっと頬が染まった。








「風が・・・出てきたね。ちょっと気を付けないと」
「本当ですね。あっちの雲行きが怪しいです」

二人の様子を見てディレクターは唸った。

「敦賀君、キョーコちゃん。この3日間の天候は大丈夫だと思ってたけど、どうしよう?もしひどくなるようなら、ここらで撤収する?」
「そうですね、特に大きな低気圧は来るとは予想されていませんでしたから、一時のものかと思いますが・・・」
「機材、濡れないようにしないと」
「その時は手伝いますよ」
「いや、これは俺たちの仕事だから、ゲストさんに申し訳ないよ」
「いえ、お気になさらず。それより、風が出てくるとまずいので、小屋の補強をしてきます。皆さんもテントを移動されたほうがいいかと」
「分かった」

午後はわらわらと天候の変化に備えて小屋の補強をした。
もともと張りだした岩に守られた横穴ではあるが、風に対する対策はしておいたほうがいい。

しばらくして、予想通りの叩きつけるような雨が降り出して、湧き水のあたりからはごうごうと水が流れていく。
今更ながら地面が乾いている横穴があって、雨風がしのげるというのは有り難い。

朝の計画とは異なり、その晩は漁に出られず、二人は夕飯にはありつけなかった。
スタッフは気を利かせて手持ちの食材を提供しようとしたのだが、蓮が頑なにそれを受け取らなかったのだ。それならばキョーコも受け取れるはずもない。

「最上さんは、食べたらいいのに」
「いえっ、敦賀さんが召し上がらないなら、私も食べません。そもそも、無人島で過ごすのが今回の番組の趣旨ですので、むやみやたらに文明のお世話になることはできないのです。(ぐぎゅう~~~きゅるきゅるきゅる・・・)」
「やせ我慢しないで」
「してません」

小さな焚火を焚いて、カメラを回しながら4人で暖をとった。
おなかの虫と格闘していたら、雨脚の強まりと同時に雷が鳴った。

ぴかっ!!
「ひゃっ!」

きゃあでもぎゃあでもない悲鳴に蓮は反応した。

「雷、嫌い?」
「じ・・・実は。好きな人のほうが珍しいと思います」
「まあ、そうかな。俺は嫌いじゃないけど」

ぴかっ!ドロドロドロドロ・・・
「ひゃうあっ!」

耳を抑えて小さくなるキョーコは、わずかに震えているようだ。

(スタッフさんがいなければ、すぐに抱きしめるんだけど・・・もどかしいな)

震える小さな肩を抱き寄せたくなるのは、キョーコだからに他ならない。

外で聞く雷鳴は家の中で聞くのと大違いで、びりびりと空気を激しく振動させる。
雷が予想外に近づいて来たと察知したのだろう。カメラマンはカメラをバッグに収めた。

「キョーコちゃん、大丈夫?一人で眠れる?」
「どうしても怖いなら、こっちのテントに来てみる?キョーコちゃんが心配なら敦賀君も一緒に来るかい?狭いけど何とかなるだろ」

おそらくカメラマンもディレクターも親切心で言っているのだろう。

「だ、大丈夫です。皆さんと一緒の空間ですから、一人で何とか・・・」
「そうですね、俺も大丈夫です。ここにまでは雨が流れこむことはないでしょうから。それより・・・最上さん、一人で本当に平気?」
「多分・・・ひゃああああっ!」

ひときわ大きな雷が落ちた音がして、キョーコは思わず蓮に縋りついた。

「あ・・・」
「あ・・・?ひゃあ!しっ・・・失礼しました!」
「いいよ。別に構わない」
「そうだよ。さすがにこれは撮ってないし、大丈夫。ほら、親しい人がそばにいるのって安心できるよね」
「す、すみません!」
「さて、ちゃんとキョーコちゃんには頼もしいナイトがついてるんだから、俺らはテントに戻ろうか」
「そうすね。じゃ、敦賀さん、キョーコちゃん、おやすみ」
「「おやすみなさい」」

どっこいせとスタッフは腰を上げて、少し離れた自分たちのテントに戻っていく。

彼らは気づいていたのだ。

以前バラエティーで何度か蓮を撮ったこともある。もちろんゲストに迎えたことだって・・・でも、二人は初めて目にしたのだ。
蓮がふとした時にキョーコに送る、慈しむような眼差しを。
そして、適切以上に距離をとるキョーコのパーソナルスペースが、蓮といるときだけ極端に小さくなっていることも。

自分たちはドラマ畑ではないけれど、ファインダーを通すと見えてくるものが違う。バラエティーだからこそ、なおのことそれが演技だとは思えない。
カメラを通せば、キョーコが蓮に対して警戒心など微塵も抱いていないことも蓮がキョーコのことを大切に思っていることも一目瞭然だ。

スタッフの二人はテントに戻り、こそりと会話を交わす。

「彼ら、いい雰囲気だったな」
「ええ、俺、この場にいていいものかと一瞬焦りました」
「はははっ、俺もだ。まさか、こっちのテントに来ないかって聞いたとき、睨まれるとは思ってなかったな」
「迫力ありましたね」
「ああ、これから恋が始まる瞬間ってか?それとも、もう付き合ってたりするかもな。俺らもしかしていいもの撮っちゃったんじゃね?」
「そうすね。明日が楽しみっす」





(続く)


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コメント

コメント(2)
何処まで自然児?敦賀氏
もう何というか、蓮様干物まで作って自然児ですね(^▽^;)
普段の仕事はモデルもあるからインの生活でしょうが、あの3点セットで大丈夫みたいですね。
でも干物が作れて料理は出来ないのね。なんで?( *´艸`)

しかしキョコと一緒の仕事なのに、雷に脅えるキョコを抱きしめてあげられなくて、スタッフの言葉につい睨んじゃって、バレてましたね♡
まあこの感じだと無事お仕事は出来そうですね。ちょっとだけ2人に甘い時間があげたいかな♡(抱き締めたり、キスぐらいとか…妄想)← 私が♡

山崎由布子

2019/11/15 23:50 URL 編集返信
かばぷー
Re: 何処まで自然児?敦賀氏
> 山崎由布子様

実は彼らの関係は、ばれていたのです。
ええ、独占欲がちらほらとね。

そして自然児の敦賀さんは、何気にお魚を捕る技術に長けておいでかと・・・(ブライアンは大きく育てようとしましたけれども)
料理と干物つくりは、別物かもしれませんねー。
甘い時間、甘い時間・・・お手手つないで満足している場合じゃないよー。

かばぷー

2019/11/16 19:01 URL 編集返信
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