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雨降りに花開く恋心 4

頭がズキズキする…。

(昨日、呑み過ぎたかな…。起きなきゃ…。)

薄らボンヤリと目を開けると、何故かそこに見える肌色の壁。

(はて?これは…何?)

指先でなぞると、滑らかで、暖かな人肌の感触。
恐る恐る顔を上向きにずらすと、夜の帝王の如く妖しい雰囲気を醸し出す、美麗な男の顔がそこにあった。

「おはよう、最上さん。朝から随分と積極的だね。」

「!??(□*△★※○?!!)~~!!」

咄嗟の時には、叫び声がでないというのは、本当らしい。
声にならない声が、部屋に満ちた。



雨降りに花開く恋心 4




「何気に酷いな。突然、化け物でも見たみたいに。君の介抱までしたというのに。」
「す、すすすすす、すみません!」

慌ててキョーコは、布団から飛び出そうとしたが、はっと自分の出で立ちに気がついた。
あろう事か、ブラとキャミソールと、パンティだけのあられもない姿だったのだ。

「!ひ…△☆(むぐっ!)」
「最上さん、静かに。こんな朝早くに耳元で叫ばれたら、耳が痛くて大変だ。因みにそれは俺じゃないよ。君が勝手に脱いだんだからね?」

蓮に口元を押さえられて、叫び声を封じられた。
コクコクと頷き、ふぐふぐと手を退けて、慌ててもう一度布団に潜り込み、何が何だかわからないながらも、取り敢えず聞きたい事から、聞いてみる事にした。

「あの…。敦賀さん、大変申し訳ございませんが、何ゆえ、その…裸なのでございましょうか?」
「何?覚えてないの?」
「は…。面目もございません。」

昨日、久々にお酒を飲んだ記憶はある。
その後、どうしたっけ?

「君はかなり酔っていた。だから俺が送って来たんだけど、吐瀉物つけたまま、一晩平気で過ごすなんて、俺は無理だな。だから、脱いだんだけど?着たままで平気とか、そんな人間がいたら、尊敬するな。」
「吐瀉物って…ま…まさか?そのような粗相を、私が?」
「おまけに、服を摑んで離さないから、大変だったよ。」
「ひえっ!すみません!た…大変ご迷惑をお掛け致しました。」
「そろそろ君もサッサと風呂に入った方が良いよ。仕事、時間見て。」
「!!!…はい!すすす、直ぐに!失礼します。」

近くにある、カーディガンを身体に巻いて、慌ててバスルームに駆け込むキョーコを、やれやれと溜め息ついて見守った。

シャワーの音を遠くに聞きながら、蓮は改めて、キョーコの部屋の中を観察した。

六畳程の1DKの部屋。
ガラス戸の向こうには、別になったバスとトイレ。

昨日は余り気にも止めなかったけど、テレビ局に勤めている人間にしては、地味な部屋だ。
基本的に物が少なく、整然と片付いていて、其処彼処には可愛らしいデザインの物が置いてあるが、どれも質素な印象を与えるのだ。

シャワーを浴び終えたキョーコが、申し訳なさそうに浴室から出てきた。

「あの…、大変失礼しました。敦賀さんはシャワーをされませんか?その間にお洋服にアイロンをかけておきますが。」
「あ…。ごめん。実は勝手に借りて浴びたんだ。それと、ついでに洗濯機も…。君んちの洗濯機が乾燥機能付で助かったよ。」
「いえ。こちらこそ、すみません。」

(そ…か…。女性のお部屋にきっと泊まり慣れていらっしゃるのね。やっぱりタラシだわ。)

ふと、キョーコは思ったが、ちょっと後回しだ。
とにかく直ぐにこの男に服を着せないと、目に毒だ。
見た目が良いのは顔だけかと思ったら、意外に筋肉質で、その筋肉さえもどうやって作り込んでいるのかしら?と、思うくらいに美しく印影が浮き出て、鍛え上げているのが分かる。
キョーコは慌てて目を反らすと、乾燥が終わったシャツとスラックスに、手際よくアイロンをかけて、蓮に渡した。

「ありがとう」

シュッ…と袖を通す姿さえも、様になる。

「何?下半身が気になる?」

スラックスをはこうとした蓮に、いきなり問いかけられて、キョーコはドッキリした。
ついうっかりと見惚れていたらしい。

「あっ…いえ!すみません。あの…コーヒーなぞ、召し上がりますか?」
「うん。お願いして良い?」
「はい。」

何だかドキドキするような感じがすると思いながら、それを隠すようにキョーコはキッチンへ向かった。
蓮は、そんなキョーコの様子を見ながら、こんな穏やかな感じは、久しぶりのような気がしていた。
コーヒーの良い香りが漂ってくる。
(いい香りだ)
キョーコの出してくれたコーヒーを飲みながら、蓮は唐突に尋ねた。

「最上さんは、一人暮らしみたいだけど、出身は東京じゃないの?」
「私ですか?出身は京都です。」
「ふうん…。じゃあ、大学からこっちに?」
「いえ、大学まで向こうにいました。就職が決まったので、上京したんです。」
「そういえば、司法試験に受かっているって聞いたけど、法学部だったの?」
「はい…。でも、それをどこから?」
「あぁ、社さんに教えて貰った。気象予報士の事も。ダメだった?」
「いえ、そんな事はないですが…。実はうち、母が弁護士なんです。」
「そうなんだ?」
「はい。私は元々お天気に興味があったんです。虹が好きで…。お天気お姉さんはどうしてこんなにお天気を当てられるんだろうって、子供心にあこがれて、お天気お姉さんになりたかったんです。それで、高校生のときに気象予報士の国家資格を取ったんですが、それが、母の逆鱗に触れまして…。それで、弁護士資格を取ったら、自由にしてやると言われたもので、がむしゃらに…。だから、弁護士資格はそんなに褒められる事ではなくて、母への反逆の証なんですよね。」
「そうなの?それにしても、そんなに優秀なら、司法修習の場所も沢山あっただろう?」
「はい。それはそうなんですけど、とにかく、私はお天気に関わる仕事がしたくて、天気予報が楽しいよって、皆さんに知って欲しくて、命からがら上京したんです。」
「命からがらって…、逃げたみたいに?お家の人の援助は、無かったの?」

躊躇いがちにキョーコは答えた。

「うちは…、母子家庭なんですけど、母が絶対的な存在でした。母に逆らうことが、ずっと怖くて…。だか、母に逆らってする仕事に援助とか、考えた事もありませんでした。大学時代のバイト料でようやく借りた場所なので…。すみません。小さな部屋で…。」

蓮が意図していた事が、さり気に伝わったらしい。
申し訳なさそうに肩をすくめるキョーコに逆に蓮の方が恥ずかしくなる。

「ごめん。言いにくい事を言わせたね。ただ、俺が心配したのは、テレビでの露出が増えると、セキュリティがしっかりとした所が良いんじゃないかと思って。」
「はあ、まぁ…。乾燥機能付の洗濯機にしたのは、ちょっと意識しましたけど、私みたいな、地味で貧相な女に懸想する殿方はいないかと…。」

この娘は…自分自身の魅力に気付いていないのだろうか?
昨日だって、収録中にいろんな男から、声をかけられているのに。
天下のLMEテレビの女子アナ。しかも、若くて実力があるとくれば、あちこちから男が寄ってくるに決まっている。
それこそ、スポーツ選手から、芸能人まで選り取りみどりだ。
それが目当てで入社してくる女性もいるのに…。

蓮は、“ふーーーっ”と深い溜息をついた。


「最上さん、君はもう少し自分自身の価値を自覚した方がいい。」
「自覚…ですか?」
「そう。無防備な姿を晒さない事。」
「無防備ですか…。」
「そう。自覚持って。さて…、俺もそろそろ仕事に行くから、これで失礼するよ。おいしいコーヒーをありがとう。ご馳走様。」

すっと立って、玄関に向かう蓮の背後から、キョーコは声をかけた。

「あのっ!昨日は本当にすみませんでした!」

小さな玄関でも絵になる男は顔だけ振り返り、綺麗な姿勢でお辞儀をするキョーコに、目を細めた。




「…あんまり無防備だと、次の時は、遠慮なく頂くからね。」

「(!)」

無駄に爽やかな笑みを残し、パタンと静かにドアが閉まった。

「(///~~~!)…あんの…天然スケコマシ~!!!」

雨も上がり、空が白み始めた中を歩き出した蓮は、キョーコの叫び声を背後に聞きながら、クスリと笑う。

(そうか…。ただ、ラッキーなだけの入社では、無かったのか。)

蓮は、彼女が腰掛けではなく、真摯な動機で入社した事に、安堵していた。




(5)に続く
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