[Edit]

憂鬱な彼と曇り空 2

前回は説明ばかりになっちゃった。
じれじれする敦賀さんが書きたいの。
表現力が欲しい…。


__________
昨日、キョーコは松島部長から、突然に勤務の変更が言い渡された。
勿論、時々は出張があったり、時間の変更があったりしたけれど、朝の天気予報は自分の使命と思って、この半年、責任をもってやってきたつもりだったから、若干寂しいものがある。
けれど、番組の後任も決まり、キョーコにとっては後輩アナウンサーが次の担当をすることになった。とはいえ、キョーコも天気予報から退くつもりはなく、夕方の天気予報の枠をゲットしてはいたのだ。




憂鬱な彼と曇り空 2




『会いたい』

そのメールに気がついたのが午後5時
何だかんだと残業する羽目になり、キョーコはまだ局内にいた。
今から、メールしてもきっと蓮は収録中だ。

(でも、会いたい)

それはキョーコも同じ気持ちだ。

「メール…してもいいかな…。」

ぽち、ぽちと、画面に向かってしっくり来る言葉を捜す。

『私も会いたいです。でも、お疲れではありませんか?お仕事、無理しすぎないでくださいね。』

蓮が忙しい人間であることは、同じ部署にいるキョーコは重々承知している。
遅番が多くて、夜遅くまで収録があることも、生ニュースがあってそれに向けて情報収集に時間がかかることも、そして何より、キョーコ自身の勤務に気遣って、夜遅くには電話をかけてこないことも…。
会えない時間が寂しいと思っても、自分はれっきとした社会人だ。恋におぼれて無様な姿をさらしたり、自分のわがままで蓮を振り回すわけには行かない。
まして、蓮は番組をいくつも抱える人気アナウンサー。時間がなくて当たり前なのだ。

でも、気になることはある。
昨日、エレベーターで自分の肩にもたれかかった蓮は、本当にしんどそうだった。
少しやせたような気がする。

「お弁当…作ってみようかな…。いや、いや、だめだから。そんなの重いと思われちゃう。」

キョーコにとっては初めてのお付き合い。
何が正しくて、何が間違っているかなんて分からない。
何もかも手探りだった。



蓮の収録が終わって、携帯をみるとキョーコからのメール。
慌てて連絡しようにも、もう遅い時間だ、きっと寝ているだろう。
画面の言葉にキョーコの思いやりが見て取れて、ふっと蓮の頬が緩む。
その時…

「チャラン!問題!最上キョーコちゃんの勤務が変更になるのはいつ?」

振り向くと、なぜか目をきらきらさせた社がいた。
社はクイズ番組の問題ナレーションが抜群にうまい。バラエティの実況なんて、神業レベルだ。
これは流石に蓮には真似ができなくて、敬遠している分野だ。

「社さん…、まだいたんですか?」
「何だよ、ひどいな。さらにいいこと教えてやろうっていうのにさ。ほれ、問題に答えて。」
「え~っと…。」

ちらりと、ホワイトボードを見る。

「ブッブー、時間切れ。明日は早番で、1日休んでから日勤だよ。」
「本当に詳しいですね。ありがとうございます。」
「お礼はいらない。だって、お前の動向次第では、この先、面白くないことが起こるから。」
「面白くないこと?」
「う~~ん。さっきの話じゃないけどさ。グリフィンズ、マジックついてるだろう?やっぱり、リーグ優勝の取材にキョーコちゃんを入れ込む気でいるよ。松島部長。」
「それ…は、仕方のないことですけど…、確かに面白くはないです。」
「だろう?紳士面して、キョーコちゃんをほったらかしにするんじゃないよ。」
「はあ…。」

蓮は今まで、自分から女性をガツガツ求めた事がなく、正直どういう風に接していいか分からない。
自分の勤務に合わせてキョーコを振り回すのはどうか…と、理性が行動にブロックをかけるのも事実だ。

「何でこう、スマートにできないかねえ。」
「すみませんね。不器用で。」
「本当だよ。キョーコちゃん、かわいそ過ぎる。」
「自覚はあります。」
「そうか、自覚はあるか。けど、本当にうかうかしてると、足元すくわれるぞ。なんたってあちらさんは、駆け引き上手なピッチャーだし?男前だし?エネルギッシュだし?」
「そのようですね。」
「女心と秋の空って言うだろ?何もしてくれない彼氏より、手近な良い男にぐらついちゃったりしてさ~。」
「煽らないでください。肝に銘じますから。」
「うん。分かってたらいいさ。お先に。」
「お疲れ様です。」

ひらひらと手を振りながら、社が先に退出した。
自分は…これからもう一つ仕事だ。
何とか時間を確保出来ないものか…。
キョーコに寂しい思いをさせているだろう自覚を持ちつつ、動けない自分がもどかしかった。







翌朝、キョーコはいつものように天気予報をして、いつものように取材に行って、いつものように気象分析をして、ようやくデスクに戻ってきた時だった。
机上の書類に紛れて、水色の付箋がパソコンの隅に見える。

“12:30~14:00 アナ室2 R”

その筆跡は、紛れもなく連のもの。
今、アナウンス室にいるのだ。
初めてのサインにキョーコの鼓動が跳ね上がり、キョロキョロと周囲を確認する。

(わわゎゎゎ~、どうしよう。社内恋愛って、緊張する~)

チラッと時計を見る。

――12:45――

次の収録先に出かけるまでは、15分しかないが、蓮の残してくれた“会いたい”のサインを逃したくない。

すぐに身支度を整えると、足早にアナウンス室に向かった。

アナウンス室のランプが消えていることを確認して、キョーコはこっそり室内に滑り込んだ。

部屋に入ると、人の気配はない。
薄暗いガラス窓の向こうに目をやると、キョーコの目に飛び込んできたのは、奥のソファーに身を預け、腕を組んだまま目を瞑っている蓮だった。

長い脚を少しだけ折りたたみ、午睡中のようにも見える。
ゆっくり扉を開けて近寄るが、声をかけるのも忍びなくて、じっと蓮の顔を見つめてしまう。
長い睫、端正な顔立ち、スースーという規則正しい息使いが聞こえる。

(そっか、疲れているわよね…。後もう少しだけ見ていたいけど…、ちょっとだけ…ね。)

蓮の額にそっと唇を近づけた時、

「そこ…?。」

キョーコはドキッとして、身を引こうとしたが、いつの間にか後ろから長い腕が伸びていて、キョーコの背後から頭が固定された。

「ここでしょ?」

蓮の唇がキョーコの唇に合わさる。
久しぶりの柔らかな感触。
頭の中がジーンとする、
“ちゅっ”とリップ音を残して、離れる唇。
中腰のキョーコを引き寄せて、ぎゅうっと抱きしめたまま、蓮が聞いた。

「キョーコの時間はどれくらい大丈夫?」
「あと10分…」
「ん…。」
「敦賀さん、もしかしてやせました?無理してません?」
「ん…大丈夫。今晩…会えない?…会いたい。」

「…私も…。」

キョーコが、がばっと思いついたように、身を起こした。

「晩御飯作ります!私、待ってますから!あ…、でも調味料ってありますか?敦賀さんのお宅のキッチンを使ったことないので、う~ん。」
「じゃあ、仕事が済んだら俺が行く。」
「いえ…それは。」
「うん?だめ?」
「いや…あの…うちは壁が薄いので…その…。

一瞬、蓮の表情が固まる。
キョーコが真っ赤になりながらもごもごと話す姿に、蓮は口をおおったままそっぽを向いた。

(そんな…期待してるって、言っちゃったよ?もう、どうしてくれる…。)

それに気付いたキョーコは、さらに真っ赤になって俯いてしまった。

(ぎゃー!ど、どどどどうしよう。これ、したいって言っちゃったの?誘っちゃったの?)

目がうろうろして、あわわと挙動不審なキョーコの姿を見て、コホンと咳払いした。

「じゃあ、鍵を渡しておくから、キョーコの好きにしていい。うちで作ってもいいし、持ってきてくれても。ただ、ちょっと遅くなるけど、待ってて。いい?」

蓮はカードキーをキョーコに渡した。

「番号はキョーコの誕生日。」

キョーコがじっと蓮を見つめる。
番号を変えたことが急に恥ずかしくなって、蓮はぶっきらぼうに言った。

「絶対!待ってて!」

キョーコはふんわりと笑って、コクンと頷いた。

「それじゃ、私はこれから取材に行って来ます。敦賀さん、収録がんばってくださいね。」

「ん。いってらっしゃい。」

わずかな逢瀬を名残惜しく思いつつ、今日の約束を胸いっぱいにして、キョーコはアナウンス室を後にした。



(3に続く)


お、調子出てきたぞ。イケイケGOGO 敦賀蓮!
社内恋愛…したことないからわかんない。
どうなの?
想像に頼るしかありませんな。

関連記事
スポンサーサイト

Pagetop

Trackback

Comment

二人が会えて嬉しいです
うぅっ(///∇///)私もジーンってしちゃった♪久しぶりのちゅうだなんて、さぞかし気持ち良かろう(* ̄∇ ̄*)

あ〰ん、いいなあ。蓮さんの「会いたい」。切実な気持ちが伝わってきますよ。
壁の薄さを気にしちゃうキョコさんもいいなあ(〃ω〃)素直で何より。このキョコさんは、本当に大人で素直で可愛いらしくて頑張りやさんで、見ていて安心しますネ(*´-`)

社さんの、「チャラン」は、可愛いかったです(* ̄∇ ̄*)
  • 2016-08-25│00:04 |
  • ぽてとたべたい&ぽてとあげたい URL│
  • [edit]
Re: 二人が会えて嬉しいです
> ぽてとたべたい&ぽてとあげたい 様

ジーンとしていただけて嬉しい。
当方のキョコさん、概ね素直で、大人可愛いです!!
…っていうか、本誌でもあまりダークな感じは私の中で印象が薄いと言うか…
どうしても、可愛いキョコさんが書きたくなっちゃうの。

素直に会いたいって言う甘えた蓮さん、自分で書いてて惚れます。
  • 2016-08-25│19:35 |
  • かばぷー URL│
  • [edit]

Post a comment

Secret

Pagetop


プロフィール

かばぷー

Author:かばぷー
ス/☆ビ大好き!
脳内妄想☆大暴走中
思いついた言葉を書き連ね
作品置き場にしています。

☆当サイトはリンクフリーではありません☆
ルールを守っておられる「ス/☆ビ」二/次サイト様、お付き合いあるマスター様と相互リンクさせていただいています。お手数ですがリンクを貼られる前に必ずご一報ください。尚、原作者様の作品画像やアニメ画像を無断掲載をされているサイト様からのリンク、多くのサイトを無断で紹介されているサイトは固くお断りさせていただきます。
(リンクはトップページにお願いいたします)

ようこそ

最新記事

リンクご案内

ちょび様
陽のうらうらと
ピコ様
Bubble Shower
sei様

風月様
popipi様
ちなぞ様